(26日、高校野球・春季近畿地区1回戦 智弁和歌山4―0滋賀学園)

 中学校を卒業してから、まだ2カ月あまり。強豪・智弁和歌山に入学したばかりの1年生がさっそく存在感を放った。

 1点リードの四回、先頭で右打席に入った「7番・二塁」の松本虎太郎は鋭いスイングで左前安打を放った。

 犠打で進塁すると、9番打者の単打で一気に生還。貴重な追加点の本塁を踏んだ。

 六回も中前安打をマーク。途中交代するまで全3打席で出塁し、2打数2安打と勝利に大きく貢献した。

 「中学の投手よりレベルが高い中で、どうやったら塁に出られるか、安打を打てるか考えながら常に試合に出ています」。試合後、この16歳はまっすぐな表情で取材に応じた。

 小学生のころから父と通った甲子園にあこがれた。同じ奈良県出身で、同校OBの黒川史陽(楽天)のような選手をめざし、智弁和歌山に進学。中学時代は捕手と三塁手が主なポジションだったが、高校では二塁手に挑戦する。

 「監督から『二塁を守ってほしい』とずっと言われていて、練習中です」。中学時代にはなかった複数の守備のサインプレーを必死に覚えようと、寮に帰ってからノートに書いたり、プロ野球の動画をみたりして、頭にたたき込む。

 「自分のミスでは絶対に負けられない。試合に出させてもらっている以上、結果を出すしかない」

 身長172センチ、体重78キロ。長打力よりもバットコントロールに自信がある。4月13日にあった春の和歌山県大会初戦から、ここまで全試合でスタメンに起用されている。

 元プロ野球選手の中谷仁監督は「思いが強い。どこで調子に乗って、さぼるのかを見ているんですけど、全くその気配がない。彼の取り組みを見ていたら、これくらいの結果は出るでしょうね。頼もしいです」と、賛辞が止まらない。

 チームは昨夏、和歌山大会2回戦で敗退。昨秋は県大会準決勝で敗れ、2季連続で甲子園出場を逃している。

 夢の舞台に向け、松本は「まずは夏もベンチに入ること。その中で自分ができることを精いっぱいして、グラウンドで役割をしっかり果たしたい」と意気込んだ。(室田賢)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。