パラリンピックメダリストで陸上男子走り幅跳びの山本篤選手（42）が27日、神戸市内で引退記者会見を開いた。「これまで22年間、いろいろなことがあったけれど、多くの人に応援してもらった。いい陸上人生を歩むことができた」と振り返り、涙は見せなかった。

　山本選手は高校2年生の時にバイク事故で左足を大腿（だいたい）部で切断したが、「義足で走り始めてから、人生がすごく楽しくなった」という。

　2008年の北京パラリンピックの走り幅跳びで銀メダルを獲得し、日本パラ陸上初の義足のメダリストになった。16年には当時の世界記録を更新。リオ・パラリンピックでも銀メダルに輝いた。

　パラ陸上の第一人者的存在だったが、今月25日まで神戸市で開かれていた世界パラ陸上競技選手権大会では5位だった。

　この日は、所属している新日本住設の本社がある神戸市内で会見した。神戸の大会で5位に終わった今月19日の夜に家族と話し合い、翌20日に引退を決断したという。

　引退の理由については「『もっと記録を伸ばせるのではないか』という気持ちで頑張ってきたけれど、腰の状態も悪くて、なかなか記録を伸ばせなかった」と振り返り、「可能性がある限りチャレンジを続けて、なくなった時点で引退しようと決めていた。シーズンの途中だが、自分にうそはつけない」と語った。また、「世界記録を出すことができたのに、パラリンピックで金メダルを取れなかったのは、悔しさが残る」と述べた。

　「僕はアスリートなので、（新聞の）スポーツ欄に載せてもらうのがとてもうれしかった」とも語った。

　今後については、「引退は次の人生のチャレンジへの新しいスタート。選手の指導をしたり、様々なイベントに参加したりしたい。パラスポーツやパラリンピックを多くの人に知ってもらうための活動をしていきたい」と意欲を見せた。（森直由）

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