その女性は、人一倍食い入るようにモニター画面を眺めていた。膝元に、亡くなった友人が大切にしていたチームのTシャツをかけて。

亡くなった友人が生前着ていたTシャツを持参して、琉球ゴールデンキングスを応援した知念未輪子さん=28日午後8時過ぎ、北中城村のイオンモール沖縄ライカム

 28日に行われた、プロバスケットボールBリーグ1部の年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)決勝の最終第3戦。昨年王者の琉球ゴールデンキングスの地元・沖縄県内であったパブリックビューイングには、約350人のブースターが足を運んでいた。

 中でも、特別な思いを胸に応援していたのは、八重瀬町の会社員知念未輪子さん(43)。3年前に亡くなった元同僚の友人女性は、キングスが大好きだったから。

パブリックビューイング会場でキングスの得点に歓声を上げるブースター=28日午後7時半ごろ、北中城村・イオンモール沖縄ライカム(金城健太撮影)

 職場で知り合った、自分より10歳近く上の彼女は、Bリーグの前身であるbjリーグ時代、初めてキングスが優勝した2009年に会場で試合を見て以来、キングスに魅了されたという。12、13年前に試合に誘われて、知念さん自身も気迫あふれるプレーに夢中になった。

 「どの選手も応援していた『ハコ推し』。キングスを愛してやまない人でした」
 そんな彼女は、Bリーグでキングスが初優勝した23年の試合を見ることなく、21年にがんで命を落とした。棺おけには、ユニホームやマスコットキャラクター「ゴーディー」のぬいぐるみなどが敷き詰められていた。

 「応援をすることで、彼女の生きた証になる」。そう考えて、今までよりもさらに多く会場に足を運び、チームを応援するようになった。昨年初優勝した後には、彼女の実家に足を運び、優勝を報告した。

キングス-広島 第2Q、シュートを決め喜ぶ琉球ゴールデンキングスのヴィック・ロー=横浜アリーナ(竹花徹朗撮影)

 28日の試合中も、「彼女の分も応援している」と話していた知念さん。だが、試合は広島ドラゴンフライズに50―65で敗れ1勝2敗となり、2連覇を逃した。

 それでも、知念さんの表情には曇り一つない。
 
「よこぞここまで連れてきてくれた、という気持ちでいっぱい。友人も同じ気持ちだと思います」。胸を張ってチームには沖縄に帰ってきてほしい。そして、来季の日本一に向けて、また「二人」で応援したい。そう思っている。(社会部・豊島鉄博)

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