交流戦の途中で大きく打順を変更した阪神タイガース。ロッテ戦での才木浩人投手の完封や初ホームランを打った前川右京選手について、6月3日、前監督の矢野燿大さんが解説しました。
チームを救った才木投手は『打者と勝負する投球術を取得』
―――6月2日、ロッテとの試合に1対0で勝ち、交流戦初勝利となった阪神タイガース。連敗は5でストップしました。完封勝利の才木投手は6勝目。非常に素晴らしいピッチングでチームを救いました。矢野さんは今年の才木投手について、『打者と勝負する投球術を取得した』と見ているようですね?
「今までの才木は、速いストレートとフォークボールを一生懸命投げるだけ、まさに『球を投げるだけ』でした。それだと、投げられるイニングも短いし、バッターにも粘られる。でも今年は、カーブやカット系のボールでも勝負できるので、少ない球数でバッターを抑えられますし、投げるイニングものびていく。だから完封もできる」
―――変化球を使って、見事に打者のタイミングをずらしたり、空振りを取ったりしていました。
「そうなんです。今まではキャッチャーのサインにうなずいて投げるだけだったんですけど、今はバッターに対して自分でいろんなことを感じながら、自分でボールを選んで投げられる。そういうところも出てきてるんじゃないかなと。技術がだいぶ備わってますし、バッターを抑えるイメージも高まってるような感じに見えますね」
―――今年の才木投手、大きく成長を感じますか?
「エースになってほしいという素材だったんですけど、『来たかな』っていう感じでしょうかね。抑え方がすごくいいです」
―――そんな才木投手は兵庫県神戸出身で、2016年ドラフト3位で入団。2020年に肘の手術(トミー・ジョン手術)を受けて育成契約になったあと、2022年に支配下復帰したという苦労人です。
「(トミー・ジョン手術は)靭帯を縫合するような手術で、本人にとって苦しい時間が長かったと思います。でもそのときにトレーニングをめちゃくちゃ前向きに頑張ってる姿を僕も見てましたし、それがつながってると思いますね」
―――矢野さんから見て才木投手は『とても前向きで明るく、性格面でもエースになれる素材』ということのようですね?
「どんなときでも、苦しい時でも明るく前に行きますし、お母さんもキャンプに来てくれたんですけど、お母さんもすごく前向きなんですよ。お母さんのいいところをもらったのかなと、僕はちょっと思ってます」
―――才木投手は登板前、歌を歌っているくらいリラックスしているそうです。一方、同い年の村上頌樹投手は緊張してすごく準備するタイプだそうです。
「よきライバルとしてエースを争えるような素材だと思うんで、楽しみです」
初ホームランを打った前川選手に注目「スタメンで使ってほしい」
―――続いて注目の選手は前川選手です。5月31日のロッテ戦でプロ初ホームラン。69試合目、196打席目での一発でした。
「いつ出てもおかしくないと思っていたんですけど、本当にいい場面で打ちました。追い込まれてからでしたけど、前川らしい、ちょっと弾道の低い強い打球のホームランでしたね」
―――ちなみに矢野さんは、プロ7打席目・初ヒットが初ホームランでした。
「でも僕は大卒の22歳で、この年に打ったヒットは3本だけなんですよ。だから前川のほうが上ですよ。前の試合で三振したんですけど、それでも星野監督が代打で使ってくれて、僕は初球を『いちにのさん』で振ろうと決めていたんですよ。それで、本当に『いちにのさん』で振ったら、ホームランになったんです」
―――今の阪神に必要なのは、『目の前の勝利』『育てながら勝つ』この2つだと?
「岡田監督も考えられてると思うんです。もちろん勝つことはもう絶対大事。でも僕は育てながら勝つというところも今はやっぱり必要かなと。みんなが調子よければ、いろんなメンバーで戦うという考え方もあるんですけど、今は前川がいいんじゃないかな。育てるというところでもいいんじゃないかなと」
―――目の前の試合に勝たなくてはいけない、さらに将来を考えて育てるというのは難しいですよね?
「打順の中で絶対使うべき選手はいると思ういますが、打順の中で1つ、こういう枠はあってもいいんじゃないかな。全部の打順ではできないですけど」
―――将来を期待してここは、ということですね。そういう意味でも前川選手を『スタメンで起用する価値がある』のではないかと?
「そうです。左投手のときはスタメンを外れたりするんですけど、そうじゃなくて左のときでも今の前川なら、育てながら勝つとか、前川をスタメンで僕は使ってほしいなって思うんです」
―――岡田監督は比較的その右・左は気にして采配されていますか?
「左の時は前川に代打を送ったり、違う選手に変えたりということが結構多いので。若いので、左でどれぐらい打てるかまだわからない。未知数なんで僕は使ってほしいなと」
矢野さんが考える「打順を大幅に変えた岡田監督の意図」とは?
―――5月31日のロッテ戦のスタメンは、ほぼほぼ固定されたメンバーでしたが、6月1日のロッテ戦は打順がガラッと変わりました。1番の近本光司選手が4番、そして植田海選手が2番に入り、大山悠輔選手は4番から7番になるなど大幅に打順変更。このあたりの意図というはどういうことが考えられますか?
「去年がみなさんの中で当たり前になっていて、去年が順調すぎたっていうのはあると思うんです。去年は固定されていたんです。今年はこの打順変更以外にも結構変更しているんですね。良いときはもちろん動かないんです。何かきっかけがほしいんですよね」
―――打順は『良いときは動かない、悪いから動くのが前提』と矢野さんは指摘しますが、選手たちはどう思っているのでしょうか?
「選手はもちろん固定してくれた方がルーティンとかいろんなことがやりやすいので、あんまり変えられると…っていうのはあります。ただ、僕も監督経験があるのでわかるんですけど、やはりどうしても負けているときっかけがほしいので、動かしたくなるっていうのは、これだけ経験のある岡田さんでもやっぱりそうされるんだなっていうのは僕もすごく感じました」
―――2軍にいる佐藤輝明選手の1軍復帰を望むファンの声もありますが?
「もう少し我慢しましょう。佐藤の場合は守備もあるので。すぐ上げると、というのが岡田監督の中にまだあるのかなと」
―――矢野さんとしては、交流戦の明けごろに元の打順に落ち着くぐらいでいいのでは、ということのようですね?
「そうですね、まだもう少しこういうことが続いていくのかなと。願望ですけど、交流戦明ける頃には『また戻ったな』って、『やっぱりこれが阪神の打線だよね』と戻ってくるのを期待したいなと思ってます」
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