引退から7年、33歳になったフィギュアスケーター・浅田真央さんは、今でも挑戦の真っただ中。世界でも類を見ないアイスショーを作り出すため、舞台演出から選曲、振付に衣裳まで、舞台に全てをかける真央さんの120日間を追いました。

新たな挑戦は「劇場で行うアイスショー」

「自分が納得するまで滑り続けるだけであって。引退してからは自分のやりたいことを全部表現できるので、スケートの幅は広がったかなと思う」

引退後、これまで2つのアイスショーを立ち上げた真央さん。出演するだけでなく、選曲、振り付け、演出、衣裳も自らで手がけ、66万人を動員するほどの舞台を作ってきました。

そんな真央さんが、今新たに挑戦しているのが、スケート場ではなく、“劇場で行うアイスショー”

6月から始まったアイスショー『Everlasting33』では、劇場のステージから張り出すように半円状のスケートリンクが作られました。

披露する33曲はすべて新プログラム。練習でも真央さんはチームの先頭に立ち、全員の演技をチェックして指示を出します。

フィギュアスケーター 浅田真央さん:
「パワーはあるから、柔らかさが出るといいよね」
「もうちょっとテンポよくやって」

衣裳の打合せでは、生地サンプルのチェックから、デザインの提案まで息つく暇もありません。

浅田真央さん:
「スカートもちょっと短めで、後ろちょっとふわふわって」
「考えることいっぱいです。常に危機感を持っていないと、間に合わない」

常に新しいことを求め、全力を傾ける。そこには真央さんのこんな思いがありました。

浅田真央さん:
「すべての軸はフィギュアスケートにある。他は何もない。頑張らなかったら、それでもう終わり」

初挑戦の空中演技に大苦戦

真央さんは、今回のショーでエアリアルにも初挑戦。エアリアルとは、サーカスなどで行われる、天井から吊るされたリングや布を使った空中演技です。

「通常のアイスショーだとスケートリンクの中なので吊るしたりできないけど、今回はいろんな舞台装置が使える会場なので」

しかし、スケートではあまり使わない上半身の筋力が重要なエアリアル。練習を始めた当初は、天井から下がった布を使ってひっくり返るだけでも大苦戦でした。

スタッフ:
「ストップ!ちょっと止めます。確認しましょう」
浅田真央さん:
「最後の上がっていくところなんですけど(相手の体を)浅く握って上がってしまったので、そのままだと、スルンって落ちそうになるので」

スケート靴を履いたままの空中演技は、危険とも隣り合わせです。

オケ生演奏へのこだわり「その時にしか出せない一瞬」

そして、真央さんが考えた劇場型アイスショーならではの新たな演出がもう1つ。それは、33曲すべてをオーケストラの生演奏で踊るというもの。

オーケストラはステージのリンクを取り囲むように、一段下がった位置に並びます。

「オーケストラの皆さん越しのスケーターなので、それはすごく贅沢な見え方になるんじゃないかなと。生演奏なので、その時にしか出せない一瞬なので」

音楽監督を務めるのは、オーケストラ指揮者の井田勝大さん。バレエ公演の生演奏を数多く手がけてきた劇場演奏のスペシャリストです。「音楽とスケートが一緒になってやるのはなかなかないことで、やってみないとわからない」と、井田さん自身も初めての挑戦とのこと。

他にも、演目には真央さんが3年前から習い始めたタップダンスも!

真央さんの師匠でもある世界的タップダンサー・HideboHさんは、真央さんのダンスへの向き合い方に驚いたと話します。

タップダンサーHideboHさん:
「本当にストイックにやっている。ちょっと表面タップができるということと、真央ちゃんがやっているのは全然違う。すごい」

姉・浅田舞のサポートとともに深夜まで調整

本番2日前となった5月31日。劇場にアイスステージも完成し、スタッフ全員で初の通し稽古が行われました。座長の真央さんは「できる限りのことをやってきましたので、それを思い切って、心を込めて滑っていきたいと思います」と真剣な表情で挨拶。

稽古では、振付よりも先にオーケストラの演奏が終わってしまうハプニングもありました。オーケストラはステージよりも一段低い位置で演奏するため、スケーターの動きが見えないのが原因でした。

すると、手を差し伸べたのが、振付も担当する姉の浅田舞さん。

浅田舞さん:
「おうちゃん、曲どうだった?ソロゆっくりだったよね」
浅田真央さん:
「キス・ザ・レインは早かった」

舞さんがオーケストラと舞台上の真央さんとの間に立って、曲のテンポを調整。マイクを使って真央さんに「早い?遅い?ちょうどいい?」と呼びかけると、首を横に振る真央さん。

浅田舞さん:
「早いみたいです」
指揮者 米田覚士さん:
「これでも早い?」

舞さんとともに、最後の調整は、深夜まで続きました。

「一瞬一瞬がスペシャルな時間だった」初日公演

そして迎えた初日。チケットは完売で、全国から1800人が詰めかけました。中には沖縄から来たという親子も。

最難関のラスト、パートナーに体を支えられ、両手を広げた真央さんが弧を描きながら空中へ浮かんでいくと、会場はひときわ大きな歓声と拍手に包まれました。

浅田真央さん:
「わーって拍手が起きたので一瞬一瞬がスペシャルな時間でした」

スケートにエアリアルにタップダンスと、全33曲すべてノーミスで演じきった真央さん。ステージを観た観客からは…

観客の女性:
「素晴らしかった!どの瞬間もフルスロットルで、全部泣きそうでした」

そして最後の最後のカーテンコールでも真央さん、みせてくれました。
なんと、長いスカートの衣裳の裾を踏んで、後ろに思いっきり転倒!ステージ上で笑い転げ、頭をコツンとたたく真央さんの姿に、観客は総立ちで拍手!大盛り上がりのフィナーレとなりました。

これには真央さんも「自分の演目ではまったくコケなかったのに最後に…。私はそういう人なんだな」と笑って振り返っていました。

宇賀神アナも大興奮「かなり贅沢な舞台」

2日の初日公演を取材した宇賀神メグアナは、「とにかく空間をフルに使ったかなり贅沢な舞台。すごく素敵だった!」と熱弁。カーテンコールでの真央さんの転倒についても「こんなお茶目な一面もあるんだと。ちょっと得した気分に会場全体がなっていた」と伝えた。

また、『Everlasting33』で真央さんと共に振付を担当したダンサーのSeishiroさん。乃木坂46の振付もしているとのことで、一ノ瀬美空さんはSeishiroさんについて、「日常の何気ないしぐさもめっちゃキレイな方。振付はすごくハイレベルで難しいけど、衣裳を使ったダンスがすごく素敵」と話した。

(THE TIME, 2024年6月5日放送より)

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