出塁が期待される1番打者。でも、春の県大会の決勝は大事な場面で三振に打ち取られた。東北大会の秋田商戦は失策が失点につながった。「チームに迷惑をかけた分、なんとか挽回(ばんかい)したい」

 花巻東の簗田蒼汰選手(3年)はそんな思いを抱え、迎えた打席だった。

 両チーム無得点の二回二死満塁。相手は春の選抜8強に貢献した好投手。「後ろには頼もしい仲間がいる。とにかくつなごう」。直球に狙いを定め、振り切ると、三塁強襲の内野安打。2人が生還した。「うまく飛んでくれた。仲間に少しでも返せた」

 五回には三塁打を放った。自分の強みにしたいと考えている長打が出て自信がついた。

 完投した葛西陸投手(3年)は「二回に自分がバントを失敗したが、その後簗田が決めてくれた。先制してくれたおかげで、落ち着いて投げられた」と感謝した。佐々木洋監督も「野手の中で唯一去年の夏からベンチに入っている選手。経験値を生かして攻守共に夏も引っ張ってほしい」と期待する。

 10年ぶりの優勝まであと一つ。簗田は「優勝して夏に向け、はずみをつけたい」。1番として出塁する、つなぐ。それを目指し、全力でプレーするつもりだ。(藤井怜)

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 強打が持ち味の盛岡大付は3安打に抑えられ、無得点に終わった。月島夏王翔(なおと)主将(3年)は「自分を含め、みんな打たなければと焦って、簡単に打ち取られる場面が多かった」と悔しさをにじませた。

 六回には走者を三塁まで進めるも、次の1本が出なかった。「夏は全勝しないと、甲子園に行けない。夏に優勝するために、この悔しさを忘れず、粘り強く、役割をしっかり全うするチームを目指す」と誓った。(藤井怜)

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