交流戦はあと1試合残して、12球団中11位の阪神タイガース。ここまでの戦いで気になったポイントや、6月21日に再開されるリーグ戦のキーマンなどについて、17日、ミスタータイガース・掛布雅之氏が解説しました。
「後半スタートして1か月間、4割ぐらい打てば…」
―――6月16日のソフトバンク戦は4対1で阪神が勝利。プロ3年目21歳の前川右京選手がプロ初の満塁ホームランを放ちました。1回1アウト満塁の場面で、3球目の直球を振り抜き、ライトスタンドへ。素晴らしい当たりでしたね?
「完璧で、打った瞬間わかるホームランですよね。たぶんお菓子の柔らかいマシュマロを握ったような、そういう感触が手に残るんです。バットがしなるような、そういう感触ってあるんです。そういう、年に1本か2本しかないようなホームランです。ほぼ完璧です。手はビリビリしません。バットを放り投げていたでしょ?もう気持ちいいんですよ」
―――前川選手は「ホームランを打てると思っていなかった。びっくりした。打った瞬間に行ったと」と、述べています。掛布さんは、前川選手がレギュラーをつかむには、『満塁HRの後の打席』が重要というお考えですね?
「あれだけいいホームラン打った後、第2打席は三振、第3打席はサードゴロ、そして第4打席は三振でした。この3打席の中で1つでもボールを見極めてフォアボールで出塁したら、ベンチの印象って全く違うんですよ。このホームランの後、続かないじゃないですか。結局、あの一点のタイミングで打っただけのホームランということになるんですよ。私のことを言って申し訳ないんですが、入団した4年目ですね、満塁ホームランでスタートしたシーズンは、1か月間で4割ぐらい打ったんですよ。それでレギュラーをつかんでいった。だから前川はこのホームランをきっかけにするためには、後半スタートの1か月間、4割ぐらいの数字を残すような野球をやれば、レギュラーをつかむということなんですよ」
「フルイニングで出る選手になるためにも『守り』をおろそかにするな」
―――ホームランの後に三振。力が入っていたのでしょうか?
「そうだと思います。そして、このホームラン1本のみというのが『やっぱり1本だけで、偶然だな』になってしまうんですよ。相手のミス、失投を捉えたというのはすごいことなんですけど、ベンチからすると、『あっ、こんなもんだったんだな』ってなってしまうんです。だからホームランの後の内容をもっとこれから大切にしないと、レギュラーにはなれないってことですよね」
―――話がありましたが、掛布さんはプロ4年目(21歳10か月)に満塁ホームランを放ちました。1977年4月2日のヤクルト戦(開幕戦)。6番サードでスタメン出場し、1回2アウト満塁の場面での一発です。ちなみにこの日の成績は4打数3安打4打点の活躍でした。また、この年の4月の成績は、打率が4割3分6厘でホームランが4本。そしてシーズンの成績は、打率3割3分1厘でホームラン23本でした。
「この開幕戦の翌日もホームランを打っているんです。それぐらい若い選手というのは、チームに勢いをつける存在でなければいけないわけです。飛躍するために、打った後の打席を丁寧に。フォアボール1つ選ぶようなボールの見極めも考えながら、内容の濃い打席を積み重ねるということが前川には大切です。それともう1つ、『守る』という野球を前川はもっと意識しなければいけない。27個目のアウトを取ってゲームセットになるんですけど、本当のレギュラーというのは、27個目のアウトを取るときにグラウンドにいる選手。前川は途中で変えられてしまうじゃないですか、守備に不安があるから。27個目のアウトを取るときにレフトというポジションを守り切る、フルイニングで出る、そういう選手になるためにも、打つだけではなく守る野球をおろそかにするなよという強いメッセージを期待を込めて送ります」
6連戦初戦の村上投手で勝てず「リズムが作りきれない。大きな誤算なのでは」
―――阪神は日本ハムとの試合があと1試合残っていますが、ここまでの交流戦を総括します。岡田監督は、目標は勝率5割というふうに交流戦の前は話していましたが、現時点で成績は6勝11敗。12球団中11位です。※去年は7勝11敗
「岡田監督へインタビューしたときに、6連戦が始まる第1戦の火曜日を大切にしたいと言っていました。その火曜日を任されている村上(頌樹投手)で勝てていない。やっぱりね、6連戦の最初を取りたいんですよ。ただその村上で勝てないので、岡田監督はちょっと6連戦のリズムが作りきれないんですよね」
―――村上投手はなぜ勝てないのでしょうか?
「ちょっと疲れはあるんだと思います。ボールがいつもより高いですよね。先制されてしまいますし、それと打線の援護がないというのも大きなポイントになるんですが、火曜日に勝てないということがやっぱり大きな誤算なのではないかなと。今年は球団史上初の連覇がかかっている年で、岡田監督が一番連覇を意識して戦っている方だと僕は思うんですよ。そこにやや焦りが出たんだと思う。だから打線を組み替えたりする。佐藤(輝明選手)の2軍落ちから1軍再登録についても、私が岡田監督にインタビューしたとき、“10日で上げるんですか?”と聞いたら、“無期限”ということを言ったので、交流戦中に1軍昇格はないと思っていたんですよ。でも、大山(悠輔選手)も2軍に落ちる、火曜日に村上で勝てない、そのときに佐藤をなぜ上げたのかって、わからないですよね。これは岡田監督の焦りだと思うんですよ。佐藤自身もああいう状態で上げられると、『何で僕は落ちたんだ』『何で上げられたんだ』と。このあたりをちゃんと首脳陣が話をしてゲームに使わないと。気持ちがモヤモヤした状態で佐藤が後半プレーするというのが一番マイナスだと思います。18日にゲームがありますけれども、その後2日空きますので、その間に佐藤とうまく首脳陣が話し合って、すっきりした気持ちで後半のレギュラーシーズンに向かってもらいたいという気持ちが強いですね」
「大山が『4番に戻れます』と自分で言うまで待ってあげてほしい」
―――大山選手は現在2軍ですが、これについてはいかがですか?
「これはね、本人の意思を尊重してもらいたいんです。上の状態で大山を佐藤のように引き上げるのではなくて、大山自身がファームでじっくりと野球をやって、気持ちも体も自分なりに“これだったら1軍で戦える状態だ”というところまで待ってあげてほしいんですよ。焦って上げてしまうと、大山を2軍に落とした意味がなくなります。大山自身が『もう大丈夫です』と、もう退路を断つような形の大山で戻ってくれば、4番に戻して開幕オーダーに近い状態で戦う形というものができてくると思いますので、大山の意思を尊重してもらいたい」
―――やはり4番というものはすごくプレッシャーがあるものなんですね?
「1番バッターの場合、例えば4回打席に立って2本ヒットを打ち、フォアボールを1つ選んだとします。3回出塁となるので、2アウト満塁で打てなかったとしても1番としてはいい数字なんですよ。4番というのは、2本ヒット打ち、フォアボールを1つ選ぶ成績を残しても、2アウト満塁で三振をしたら、この1打席をあれこれ言われるわけです。これが1番と4番の大きな差なんです。そういう意味では4番を任せられるのはやはり大山しかいないと思います。1軍に上がってくるまで佐藤でも構わないと思うんですが、大山が『4番に戻れます』と自分で言うまで待ってあげてほしいなと。これが連覇の鍵だと思います」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。