(24日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会函館地区Aブロック2回戦 江差2―7函館工)

 江差の南部谷蓮真選手(3年)は、わずか1球の出番で2点を返す三塁打を放った。

 六回の攻撃を0―5で迎えた江差は、折から強くなった雨で11分間の中断を挟んで、1死一、二塁の好機を迎えていた。榎本航平監督が代打に送り出したのは「チーム一のパワーと飛距離、広角に長打が打てる」と評する左打ちの南部谷選手。「守備と走塁に難があり控えに回ったが、本人にはいつも、一番いい場面でいくぞ、と声をかけていた」

 ベンチから相手投手を観察していた南部谷選手は「初球に遅いボールがある。それをためて打とう」と決めていた。内角気味の遅めの初球を強打した。右翼手を大きく越えて転がっていく打球が目に入り、迷わず二塁を蹴った。すぐに代走を送られ、一塁コーチに入った。

 2年生では一塁を守っていた。練習試合中にフライを捕球しようとして腰に違和感を感じた。骨が折れていた。ヘルニアも患った。「絶対3年まで野球を続ける」という一心でやってきて、迎えた最後の打席。「自分を信じろと言ってくれた父さんのおかげです」

 ベンチではひときわ響く野太い声で仲間を鼓舞し続けた。記者にそのことを伝えられると、「ありがとうございます」と、一段とうれしそうな表情を浮かべた。(野田一郎)

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