今年も夏がやってくる。第106回全国高校野球選手権千葉大会の開会式が7月6日にあり、10日から試合が始まる。球児たちはそれぞれ夢を抱き、白球を追いかける。同じように野球部以外の生徒たちも、それぞれの思いを胸に、夏を駆ける。(田辺詩織)
毎年開会式で国歌と大会歌「栄冠は君に輝く」の合唱を披露するのが、八千代松陰の合唱部だ。
1980年春、同校は選抜大会に出場し、春夏を通じて初めて甲子園の土を踏んだ。そのときの監督が2代目校長の故山下章氏で、その後、県高野連副会長も務めた。その縁で同校は約20年前から開会式で演奏している。コロナ禍による演奏中止があったものの、今年も花を添えてくれる。
開会式の練習は、7月以降に始まる夏の合唱コンクールに向けた練習と並行して行う。
顧問を務める上野康浩教諭は「球児や観覧客のために純粋にのびのびと歌うのは、部員たちにとっていい経験」と話す。
大会歌は伸びやかでテンポの良い曲調が特徴。テンポが速くても歌詞の内容が伝わるように、子音を目立たせるなど工夫を重ね、本番に備える。
大会歌の歌詞を見ると「やるんだ!」という気持ちがよみがえると話すのは、山下恵歩(けいと)さん(1年)だ。中学時代は野球部だった。「一生分野球した」と思い、高校では合唱部に入ったが、同級生には野球部員もいる。「選ばなかったもう一つの道。演奏で選手の背中を押したい」と語る。
合唱部長の石井凛さん(3年)は、こんな思いで本番に臨むつもりだ。
「この大会が始まりの人も終わりの人もいる。球児のために、気持ちを込めて歌いたい」
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成東の応援部はスタイルを変えながらも、伝統の応援を今年も見せる。
部員全員が女子で、チアリーディングによる応援活動が中心の部だ。
1956年に野球部の応援団として創設され、89年夏の甲子園出場の翌年に「部」となった。
当初は男子のみで、94年に女子の入部を認めたときには卒業生から反発もあったというが、現在は女子16人で活動する。応援部副部長の秋葉真歩さん(3年)は「先輩たちの応援を見て憧れた」と入部当時を振り返る。
夏の大会の応援は一大行事であり、様々な人の力を借りて臨む予定だ。
部員ではないが、男子である清水幹介さん(3年)が助っ人として応援団長を務める。「野球部には仲の良い友達がたくさんいる。友達のために応援できるなら」と引き受けた。歴代団長に受け継がれるはかまを着ることは「緊張と興奮が半々」で、「マウンドの向こうまで届く応援をしたい」。
吹奏楽部も協力する。演奏会のほか、文化祭や夏のコンクールの準備が重なる時期だが、野球部の応援は外せない。吹奏楽部長の福田恵里香さん(2年)によると、野球の応援ではパートを越えた一体感を楽しめる。
同校の野球応援といえば「成東節」が知られる。40年以上前からあるという伝統曲で、吹奏楽の演奏に合わせ、野球部員、応援団が一体となって歌と踊りをつける。
まさに部の垣根を越えた応援。応援部長の桜田茉弥さん(3年)は「他の部や周りの人も引っ張って応援したい」。
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