足腰に一気に力を込め、そり立った壁面のホールドに飛びつく。

 石巻(宮城県石巻市)で主将を務める平塚凌駕(りょうが)さん(3年)は、人工壁の登頂を競う「ボルダリング」が得意。小学校の時には、全国大会に出場した経歴の持ち主だ。

 ボルダリングは小学2年生の時、テレビで映像を見たことをきっかけに、未経験の父親とともに始めた。4年生の時にはアウトドア用品の大手企業が主催する大会に参加。東北ブロックを勝ち抜き、全国大会に出場してベスト16になった。

 野球を始めたのもこの頃。友達から誘われ、少年野球チームに入り、投手になった。一方で、野球の練習が終わった後には、ボルダリングのジムにも通い続けた。ボルダリングの練習時間を削ることはなかった。

 中学生に上がると、投手とともに野手も担うようになった。ボルダリングからは、少し距離が離れた。それまで通っていたジムが閉店してしまい、そのタイミングで野球の比重が大きくなっていったからだ。

 高校進学を考え始めた頃、地元の進学校の石巻で、野球の体験会に参加した。選手自身が考えながらプレーしている姿を見て「自分もこういうふうになりたい。ここで野球がしたい」と思った。

 石巻に進学して野球部に入ると、それまで以上に様々なポジションを任され始めた。投手も捕手も外野手も経験。現在は内野手を中心にどこのポジションでもこなす。

 ボルダリングは今でも続けている。遊びやトレーニングの一環で月に数回ジムに通う。ボルダリングで培ったバランス感覚や指の力は、野球で守備や投手をする際に「生きている」と実感する。

 守備ではきわどいライナーが飛んできても、体幹の強さを生かしてうまく捕球し、送球できる。投手の時は強い握力のおかげで変化球のキレが増した。いずれもボルダリング経験のたまものだ。

 実は、野球とボルダリングだけではない。昔から「スポーツは何でも好き」。小学生の頃からクロスカントリー大会にも出場する。自然の地形を利用する長距離競走だけに、体力やコース取りなどが重要だ。学校は毎日往復20キロの距離を自転車で通えるほど、持久力にも自信がある。

 大学進学後は「法律について学びたい」という。部活やサークルには所属せず、いろんなスポーツをやりたいと思っている。

 今の夢は「消防士になること」だ。中でもレスキュー隊に興味をもち、クライミング仲間の消防士から仕事のやりがいなどの話を聞いている。

 18歳。この先、平塚さんの夢はどんなものになるだろうか。幾通りの明るい希望の道が見える。(吉村美耶)

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