勝率は驚異の“8割5分超”

PL学園元監督 中村順司さん
「こうして並べてみたことはなかったですけど、すごいですね。どれも思い出深いです」

8つのメダルを並べて当時の記憶を鮮明に振り返る中村さん。

1980年からおよそ18年間、PL学園の監督を務め、黄金時代を築きました。

その実績は幾多の栄光が刻まれてきた甲子園の歴史の中でもひときわ輝いています。

大会結果 主なトピック
1981年春 優勝
決勝の逆転サヨナラ勝ちで「逆転のPL」が定着
1982年春 優勝
52年ぶり史上2校目のセンバツ連覇
1983年夏 優勝
1年生の桑田真澄選手、清原和博選手のK・Kコンビが大活躍
1984年春 準優勝
春夏の甲子園で20連勝 大会記録に並ぶ1試合ホームラン6本
1984年夏 準優勝
清原選手が3打数連続ホームラン
1985年夏 優勝
大会記録の1試合29得点 K・Kコンビ最後の夏に有終の美
1987年春 優勝
立浪和義主将を中心に投打に強さ
1987年夏 優勝
史上4校目の春夏連覇 宮本慎也選手など5人が後にプロへ

春夏の甲子園の通算成績
58勝(歴代3位)10敗
勝率 8割5分3厘

中村さんは、PL学園の監督を1998年春に退任したあとも、高校野球の解説者や、母校の名古屋商科大の監督を務めるなど学生野球に長く携わってきました。

甲子園球場とはどんな場所なのでしょうか。

PL学園元監督 中村順司さん
「選手と一緒に行くところですね。選手に連れていってもらうところですね。楽しい思い出を選手たちに作ってもらいました。『ありがとうございます』、と伝えたいですね」

指導の原点は“長く野球を”

中村さんが、その教え子たちに繰り返し伝えてきたのが、基本の大切さです。

桑田さんと清原さんの「K・Kコンビ」や「逆転のPL」といった代名詞に象徴されるように豪快な野球のイメージが強いPL学園。

実は、多くの時間をかけていたのは、キャッチボールなど基本練習だったといいます。

中村さんは、こうした基本が守りからリズムをつかむことにつながり、試合を優位に進めることができていたと振り返ります。

その指導の原点には、高校を卒業したあとも、長く野球を続けてもらいたいという親心がありました。

PL学園元監督 中村順司さん
「監督に就任して最初に思ったのは、選手たちに高校で終わるのではなく、大学や社会人、プロで長く野球をやってほしいということでした。そのために無理、むだを省いていく。バットの握り方、捕球のしかた、体の理にかなった投げ方をしたら故障しないし、長くやれるんじゃないかなと」

中村さんの指導を受けた選手は39人がプロ野球でプレーしました。

このうち5人が通算2000本安打を達成。

いずれも40歳を過ぎるまでチームの中心選手として現役を続け、中村さんの教えをプロの世界で体現しました。

中村順司さんが指導した2000本安打達成者(日米通算含む)
・1985年度卒 清原和博 2122安打(西武、巨人など)
・1987年度卒 立浪和義 2480安打(中日)
・1988年度卒 宮本慎也 2133安打(ヤクルト)
・1993年度卒 松井稼頭央 2705安打(西武、メッツなど)
・1995年度卒 福留孝介 2450安打(中日、カブスなど)

いまも伝える基本の大切さ

去年、喜寿を迎えた中村さんはいまも年に数回、小中学生や女子選手に野球を教えています。

練習前から繰り返し伝えているのは、PL学園の監督の時と同じ、基本の大切さです。

中村さんは近年、気になっているのが、子どもたちがボールを投げるときのグラブの使い方です。

グラブをはめている手を人さし指から小指までの4本の指でしっかり握ることで、投げる腕にも力が伝えられるといいます。

しかし、最近の子どもたちは、ゲームやスマートフォンの操作で親指を使うことが増えた影響で、親指に力が入りすぎて正しく握れていないというのです。

グラブの使い方がおろそかになると、投げる腕の肩やひじに負担がかかると伝えていました。

PL学園元監督 中村順司さん
「ボクシングでもパンチしない手をこうやって握っているんだよ。4本の指でくっと握っておかないと、投げる腕に衝撃がくるんよ。いまは親指使ってしまっているんだよ。“親”を使うな。“親”を酷使するな」

好きな野球で休むことがないように

バッティングについても、バットの握り方という基本が大事だと指導しています。

子どもたちにもわかるよう、例に出したのは、箸やペンといった日常生活で使うものです。

「みんな箸で納豆混ぜたり、肉を食べたりするときに指使うやんか。ペンで文字書くときも手のひらじゃなくて指で持つやんか。バットも指で持つんだよ」

中村さんは、バットを手のひらで握って、腕の力に頼って力任せに振っている選手が多いと感じています。

指で握れば、手首の力がうまく使えて、バットを力強く振ることができると実演を交えて教えていました。

2時間あまりの指導には、監督時代を思い起こさせる情熱が込められていました。

最後に中村さんは子どもたちに改めて基本の大切さを伝えました。

PL学園元監督 中村順司さん
「きょう教えたのは基本的なことや。体を正しく使えないと、ひじが痛いとか、肩が痛いとか、好きな野球で休むことになるやんか。そういうことがないように無理せず、むだづかいせずに正しい体の使い方を身につけてくれたら高校につながっていくと思うし、それが結果的に勝負に勝つことにつながるのかもしれない」

甲子園を目指して成長を

甲子園球場の開場からまもなく100周年。

中村さんは、その舞台を目指して、基本を大切に技術を磨いていくことが、人としての成長につながると考えています。

そして、今後も甲子園が球児たちの成長を見守り続ける場であることを願っています。

中村順司さん
「キャッチボール一つにしても相手の取りやすいボールを投げようというのが、ふだんの会話で相手のことを思いやることと共通していますよね。野球の中に人生を語る教材があると思いますから、野球を通して体験したこと、涙し、喜んで、苦しかったことをその後の人生にも生かしてほしい。高校球児が目標にする甲子園球場、聖地はこれからもまた継続して続いてほしいなと思いますね」

(7月2日 「ほっと関西」で放送予定)

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