第106回全国高校野球選手権熊本大会が6日、開幕します。少子化などの影響で全国的に野球部員の数が減っている中、厳しい環境下でも白球を追い続ける部員らの姿を3回に分けて描きます。
今回は第1回。部員とマネジャーの2人が二人三脚で歩んできた高校を紹介します。
広々としたグラウンドを2人が走っていた。放課後の熊本県立松橋高校(宇城市)。野球部では、いつもの練習風景だ。
主将の広瀬健亮さん(3年)と女子マネジャーの白川綺菜(あやな)さん(2年)は昨夏から「大好きな野球を続けたい」と支え合ってきた。
2人が入部したのは昨年4月。それまで、当時3年生だった村田章悟さん(18)1人きりだった。小中学校と軟式野球をしていた広瀬さんは、自分には肌が合わない気がしてすぐには入部しなかった。でも1年間、どの部活動にも参加せずに過ごすと「また野球がしたい」という気持ちがわき上がった。1人で荒れたグラウンドの草むしりや整備を続け、黙々と練習していた村田さんの姿にも、ほだされた。
小学生のとき少年野球チームで選手経験があった白川さんは、高校生になったら野球部に入ろうと決めていた。マネジャーではなく選手として入部し、男子部員2人と同じ練習をこなした。合同チームの練習試合に出場したこともあった。
村田さんが昨夏の大会後に引退すると、広瀬さんと2人きりになった。寂しくなり、出来る練習も限られた。それでも野球は楽しかった。
「選手として試合に出たい」悩んだ末に
白川さんには葛藤もあった。連合チーム全体の部員数が増えると、選手として参加できる場面が減っていった。自分で女子野球のクラブチームを探し、週末は都合が合えば選手としての練習や試合に参加するようになった。
今春、連合チームでの練習試合出場がいよいよ難しくなり、部員からマネジャーへの転身を打診された。一時は監督の松岡元希教諭や広瀬さんに「退部したい」と漏らした白川さんだったが、部に残ることを選んだ。
「広瀬さんを1人にさせたらいかんな。最後の夏までは一緒に練習しよう」と思い直したからだ。
部員とマネジャーになったとはいえ、練習はこれまで通り対等だ。打撃練習では互いが打撃投手を務め、同じ球数だけ打つ。「天然キャラ」で、どこかとぼけたところがある広瀬さんを、白川さんが「しっかりしてくださいよ」と叱咤(しった)し、広瀬さんも松岡監督や部長の岡本政輝教諭から個別に受けた助言を、身ぶりを交えて白川さんに伝える。
2人で支え合ってきた野球部は今夏、御船、矢部、甲佐、湧心館、八代農との6校連合チームで熊本大会に臨む。
中堅手の広瀬さんは力強い打撃が持ち味だ。この1年余り、攻守や精神面のすべてで「成長しました」と見守ってきた白川さんは「1本でも多くヒットを打つところを見せて欲しい」と願う。
広瀬さんは「連合チームは6校それぞれのユニホームを着て戦うけど『勝つぞ』という気持ちは一つ。その思いの強さはどこにも負けません」と胸を張る。2人での練習を積み重ね「悔いのない夏にしよう」と誓っている。(吉田啓)
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