(5日、第106回全国高校野球選手権新潟大会1回戦 高田北城3―0糸魚川白嶺)

 「一番いい投球ができた」。敗れはしたが、糸魚川白嶺のエース中谷翔(3年)は胸を張った。だが、失点がいずれも犠飛だったことを問われると、「悔しいです」と声を詰まらせた。

 中谷に野球の手ほどきをしたのは、かつて高校球児だった祖父満太郎さん(80)だ。孫が小学4年から野球を始めると妻カズエさん(77)を伴い、果物やケーキなどの差し入れを持ってすべての試合の応援に駆けつけた。中谷の母美香さん(47)は「私が中高でバレーボールをしていた時、まったく応援に来なかったのに」と笑う。

 満太郎さんは、中谷が高校に入る前までキャッチボールの相手もした。その後は自宅での素振りを見守った。「孫の打撃フォームは私と完成させたんです」と誇る。

 満太郎さんとカズエさん、美香さんは高田北城戦にも駆けつけた。球児生活にピリオドを打った孫。満太郎さんは「私も80歳。糸魚川から出てくるのも大変になったから、ちょうど潮時ですよ」。中谷は祖父母と母に贈る言葉を問われ、「ありがとう。その一言です」。万感がこもっていた。(鈴木剛志)

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