「マネジャーになろうと思います」

 東海大熊本星翔の野球部員、長谷田蓮さん(3年)は昨年11月、野仲義高監督に申し出た。

 三塁手だったが、2年生の9月、体育の授業中に足の靱帯(じんたい)が切れるけがを負った。治療やリハビリを終え、医師に「完治した」とお墨付きをもらってグラウンドに戻っても、以前のようには踏ん張りが効かず、全力疾走すると足が腫れた。

 最後の夏までに残された時間と自身の実力を考えて、選手をやめる決断をした。

 だが、高校野球が嫌いになったわけではない。マネジャーとして残れば、チームをより良くすることに貢献できるのではと考えた。

 部にはすでに11人の女子マネジャーがいたが、彼女たちでは気づきにくい、選手の目線で気になっていたことから手をつけた。用具がしまってある倉庫の整理や、選手たちが学校からグラウンドまで通うのに乗ってきた自転車を、美しく整列させることに取り組んだ。

 「見栄えの良さ」はチームの強さにもつながると感じていたからだ。

 練習の様子を徹底的に観察して、「声を出している人と出していない人の違い」「積極的に動く人と、動かない人の差」「練習後に自分で課題を見つけて自主練習に取り組む人が活躍できている」など、気づいたことをメモに取り、グループLINEで選手たちに送る。

 「なぜマネジャーに?」と不思議がられ、厳しい助言は疎んじられているかもしれない。

 それでも構わない。「試合が終わるまで、何があるか分からない」高校野球で、わずかでもチームの力になればよい、と割り切っている。

 練習試合では記録員を任されることもある。

 記録員として甲子園のベンチに入る。それがいまの目標だ。

 東海大熊本星翔は7日、熊本北との初戦を迎える予定だ。(吉田啓)

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