(7日、全国高校野球選手権広島大会1回戦 吉田7―3三原)

 自分を安心させるように、2回大きく素振りをした。

 4点差をつけられて迎えた九回2死。三原の中本壮一郎主将(3年)が打席に入ると、相手バッテリーがタイムを取った。「全然うまくいってなかったから、自分のスイングを確かめたくて」。ここまで4打席のうち2度、三振に倒れていた。

 吉田の先発・船岡稜投手(3年)の166球目となる初球をフルスイング。甘めにきた直球だったが、ジャストミートしていない感覚があった。

 勢いなく右中間に上がった打球。右翼手がグラブに収めた後も、一、二塁間でしばらく外野方向を見つめていた。「スコアボードを見て、本当に終わったんだと思いました」

 主将として、言葉をかけたり、片付けを率先したりしているうちに、部員から「ボス」と呼ばれるようになった。平龍人監督は「信頼の証しですね。彼に最後の打席が回ってきたのも運命かなと思います」。

 「ボス」の最後の夏は無安打。「打ちたかったです」と目を潤ませた。(根本快)

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