(7日、第106回全国高校野球選手権滋賀大会1回戦 彦根翔西館17―0安曇川・湖南農・信楽・甲南・愛知・長浜農)
滋賀県では過去最多となった6校連合チームの「夏」が終わった。
初戦敗退となったが、6校の選手らはそれぞれ部員不足という厳しい環境のなかで練習に励み、一つのチームとしてこの日に臨んだ。スタンドで見守った保護者らは、そんな日々を振り返り、選手たちの努力をたたえた。
選手の内訳(開幕時)は、安曇川4人、湖南農2人、信楽5人、甲南2人、愛知5人。長浜農はマネジャーが1人いるだけで、選手はゼロだった。
今回の連合チームは、琵琶湖北西部の安曇川、北東部の長浜農、南部の信楽などと広範囲にわたることが特徴だった。
6校の選手たちは、平日は各校で練習。土日になると、保護者に送ってもらうなどして一堂に会し、合同練習や練習試合に臨んでいた。
3投手が力投
この日は、山中裕人投手(湖南農3年)が先発。西村太久蔵投手(甲南3年)、岡田蒼大投手(安曇川3年)が継投した。西村投手は六回途中に再登板して力投した。
投手陣は打たせて取る投球を心がけた。五回までを7失点に抑えて、五回コールド負けをなんとか防いだ。だが、六回に10失点して突き放された。
打線はノーヒットが続いたが、六回裏に先頭の市瀬晴選手(甲南3年)がこの試合初の右前安打を放った。次打者の宮下剛志選手(愛知2年)が内野安打で続き、スタンドをわかせた。だが、あと一本が出ず、得点につなげられなかった。
6校連合のスタンドには、保護者らのほかに、昨秋と今春に安曇川と連合チームを組んだ高島の選手らも駆けつけた。信楽の地元の焼き物、信楽焼のタヌキの置物も見守った。
試合後、選手たちは充実の表情
試合後、選手たちは充実した表情で報道陣の取材に答えた。
先発した山中投手は、湖南農の選手が自分1人になったときも、やめずに続けてきた。「最後は1勝したかった」としつつ、「ずっとやめたいと思っていたけど、最後の試合で先発投手や4番打者を経験できた。続けてきてよかった」と笑顔だった。
西村投手は「部員が少ないため、単独チームだったら平日にできる練習が土日にしかできず、チームワークを深めるのが難しかった」と振り返り、「きょうは六回まで粘れてよかった」と話した。
信楽の上野俊一選手(3年)は「チームメートとアウトを取れて楽しかった」。安曇川の水艸(みずくさ)志月選手(3年)は「6校連合がなかったら試合に出られなかった。最高でした。感謝の気持ちで一杯です」とすがすがしい表情だった。
6校連合の主将を務めた村井昊明選手(3年)は「悔しい」としつつ、「最後までちゃんと気持ちが出せた。球場の人たちに『少ない人数でもやっていける』ということを伝えられたと思う」と胸を張った。
保護者ら「よく続けてがんばった」
保護者も選手たちをたたえた。水艸選手の父・治樹さんは「五回コールドではなく、六回コールド。よくやりました」。西村投手の母・知江子さんは、息子がマウンドや打席に立つたびに、スタンドの最前列に行って声援を送っていた。試合後、「よく続けてがんばった。試合では点数につながらなかったけど、将来につながるものが6校連合で見つけられたと思います」と話した。
監督を務めた長浜農の坪内勇人監督は「これは貴重な経験。人数がそろわなかったり、弱かったりしたらダメじゃなくて、あきらめずに続けることを学んでほしかった」。
選手や保護者らは試合後、球場の外で集まって名残を惜しんでいた。「6校連合の夏物語はこれで終わりや」。そう言って、坪内監督は球場を後にした。(仲程雄平)
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