(10日、第106回全国高校野球選手権西東京大会2回戦 八王子北10―0八王子桑志・南多摩)
八王子桑志・南多摩連合の日巻竜太(3年)は試合に負けた後、スタンドへのあいさつを終えると、しばらくその場で天を仰いだ。「悲しくてグラウンドを見られなかった」。1人だった日々が頭に浮かんできた。
八王子桑志の部員は今春、1、2年生の4人が入部してくるまでは日巻だけだった。入部当初、5人の同級生がいたが、バイトなどを理由に辞め、1年の夏から1人だった。
放課後、グラウンドに出ても誰もいない。友達からは「1人ならやめろよ」「まだ野球しているの」と言われ、心が折れかけたこともあった。
でも、やめようとは思わなかった。顧問の内田光治教諭が、キャッチボールやノックなどの練習に付き合ってくれたからだ。
印象に残っているのは、ある雨の日のこと。授業後で疲れているはずなのに、一緒に校舎の階段ダッシュをしてくれた。「この先生のために勝ちたい」。1人のことを言い訳になんてできなかった。
10日の八王子北戦。公式戦に初めて先発出場することができた。四回に中前安打を放ち、ベンチにいた内田教諭に向け、ガッツポーズをした。「先生のためにも絶対に打ちたかった」
試合は六回コールド負け。これだけ先生と練習してきたのに、最後の夏はあっという間だった。「もっと先生と野球がしたかったし、恩返しがしたかった。もう先生と野球ができないなんて」。実感が湧かないまま、球場を後にした。=スリーボンド八王子(吉村駿)
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