昨夏、第105回全国高校野球選手権記念大会で107年ぶりの全国制覇を成し遂げた慶応高校。その野球部史が今春、出版された。
野球部の歴史にとどまらず、日本の野球史や年ごとの世俗などにも触れた充実した内容だ。
このほど、一般の人も購入できる機会を設けた。編集長として作業にあたった野球部の前部長・七條義夫教諭(64)に部史発刊の経緯や特色などを聞いた。
編纂を始めたのは、5年ほど前から。「コロナ禍もあり完成を心配した」というが、「コロナ禍前に新制慶応高校野球部の1回生や当時の監督らとの座談会をしていたのが大いに役立った」という。
構成はハードカバーの記録編と、ソフトカバーの記憶編の2冊。七條氏は「コンセプトはソファやベッドに寝転がって記憶編を読んでもらい、面白いなあと思ったら記録編も読んでもらえれば」と話す。
慶応高の野球部長になったのが2002年。その頃から、戦前の慶応普通部と慶応商工の流れをつながないと「部の歴史が1948年発足の新制高校だけになってしまい、普通部や商工も含めた出場回数や第2回全国中等学校優勝野球大会(現全国高校野球選手権大会)の優勝もないものになってしまう」という危機感が、記録と歴史を詰め込んだ部史の完成につながった。
年表にもこだわった。例えば第44回全国選手権大会に出場した62年。慶応義塾の項目は「大学ビジネス・スクールの開設」。日本と世界の野球史には「作新学院が春夏甲子園に初の連続優勝。ナ・リーグが10球団になる」。世界と日本の動きには「キューバミサイル危機。東京都、世界初の1000万都市に」といった具合だ。
イベント以外にも、その年の著名な出版物なども記した。「野球部、慶応義塾、日本と世界の野球、そして文化史的な要素も入れた」と振り返る。生の声を盛り込むため、座談会も多く掲載している。
本来の予定では昨秋の発刊だったが、野球部の全国制覇で写真と記録、優勝選手の座談会も入れることになった。「嬉しい悲鳴でした」と七條氏は笑う。
「新制高校の慶応高校が『なぜ107年ぶりの優勝』なのか、この本を読めば納得してもらえると思います。優勝して、次の大会が始まる前に発刊できた。すべていいタイミングでした」
七條氏は「慶応関係者だけではなく、広く野球、野球史に関心のある方々に読んでもらいたい」と話す。
A4判で記録編が643ページ、記憶編が279ページ。1冊1万1500円(送料込み)。購入先は日吉倶楽部(慶応高校野球部OB会)http://www.hiyoshi-club.jpまで。電話は「岡田・今西・山本法律事務所内」03・3254・1666(平日10~17時)。(荒川公治)
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