第106回全国高校野球長崎大会が13日開幕する。反発性能を低く抑えた新基準の金属バットが使用される夏の大会。県内の高校は新たなバットに対応するため、工夫を重ねて大会に臨む。
金属バットが導入されたのは1974年。折れやすい木製よりも経済的という理由だった。その後、メーカーの開発競争でバットの性能が向上し、投げすぎによって、投手がひじや肩を痛めるなど負担が高まったことなどから、新基準バットの導入が議論されるようになった。
新基準ではバットの最大直径を67ミリ未満から、64ミリ未満に変更。打球部の肉厚を約3ミリから約4ミリにした。その結果、日本高野連の実験では、打球の初速が3・6%減少、反発性能も5~9%落ちたという。
大会が迫った7月上旬の長崎商業の野球場。
「次はノーアウト、二、三塁」。西口博之監督(63)の声が響く。部員らは指示された想定で何度も内野守備の連係を確認していた。
新基準バットの導入で長打が出ず、点が入りにくくなり、バントや機動力を絡めた攻撃が増える可能性がある――。対応するため守備連係に力を入れているという。
同校の川瀬准之介主将(3年)は打者の立場から、新基準バットの使い心地を「これまでは外野手の向こうに飛んでいた当たりも、失速してアウトになる」と話す。対策は低く強い打球を打つこと。試合中も声を掛け合って、意識の徹底を図っているという。
パワーヒッターの股張隼大(はやた)選手(3年)は「ボールとバットが当たる瞬間を強く意識してスイングしている。遠くに飛ばすより、強いゴロを打つように意識を変えた」と話す。
負担軽減になるとされる投手側はどう見るのか。146キロの最高球速を誇る同校の主戦、野原英主(えいす)投手(3年)は「バットの打撃に適した部分の面積が減ったので、内野ゴロでアウトにする機会が増えた」と話す。一方で、当たり損ねによるファウルが増えたため、「球数は増えた気がする」という。
他校の指導者に聞くと、長崎西の宗田将平監督(49)は失速するフライでなく「鋭く、低い弾道の打球を打とう」と部員に指示しているという。
春から導入したのは、マネジャーによる各打者のフォームの録画。各選手は録画をよく見て、改善点を把握してから練習して強い打球を追求している。
壱岐の坂本徹監督(40)は、バットとボールが当たった瞬間に「ぐいっと押し込むように」と教えているという。少しでも、ボールに力を伝えるための工夫だ。
説明で例に挙げているのが剣道だ。打ち込みの瞬間に竹刀を絞る感覚をバットで実現したいと考えているという。また、ティースタンドに置いたテニスボールを素手でたたく練習で、バットが当たる「面」をきちんと把握できるようにしているという。(天野光一)
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