(14日、第106回全国高校野球静岡大会2回戦 浜松商10―9清流館)

 2点差まで詰めた九回裏2死一塁、浜松商は4番曽布川ザイレン選手(3年)に打順が回った。

 一回に走者一掃の先制三塁打を放った大会屈指の好打者だが、守備で送球ミスなどが続いた。逆転を許し、「なんとかしなければ」と焦る気持ちが力みとなり、思うように打てなかった。重圧がかかった。

 「俺が決める」ではなく「つなごう」と考えた。四球を選び、続く永徳京平選手(3年)の安打で同点のホームを踏んだ。

 試合を決めるサヨナラ打は波多爽志選手(3年)だった。捕手として投手陣をうまくリードできず、「仲間のミスが原因で終わりにしたくない」とも感じていた。波多選手も同じように、「決めるぞ」ではなく「つなごう」と打席に入り、外角の直球を逆らわずにはじき返した。二塁にいた永徳選手が本塁に滑り込むと選手がベンチから笑顔で飛び出した。

 今春の県大会で6―2から九回表に7点奪って逆転した経験がある選手たちは「あきらめない、負けないという気持ちが九回に強くなった」と振り返った。

 清流館は紅林蒼空投手(3年)、鈴木心英投手(2年)の継投で浜松商打線を追い込んだ。九回表には鈴木選手が自らの二塁打で追加点をあげたが、最後につかまった。球場を去るバスに向かう間もナインに肩を抱かれながら声をあげて泣き続けた。鈴木投手は「九回は体力がもたなかった。気力で投げたが、その気力が足りなかったんだと思う」と声を絞り出し、「来年こそは」と続けた。(青田秀樹)

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