(17日、第106回全国高校野球選手権京都大会3回戦 立命館宇治5―1京都精華)

 京都精華にとって土壇場の九回表2死一塁。塁上にいた大谷英心さん(3年)は、相手投手が投球動作に入ったのを見て、迷わず、スタートを切った。「自分が次の塁に進まないと。行くしかない」

 この回、代走として起用されていた。ぐんぐん加速し、ヘッドスライディングで二塁へ飛び込んだ。

 セーフ。盗塁成功。

 アウトになれば試合終了の場面での果敢な走塁に、球場がどよめいた。思わず、ガッツポーズが出た。「ノーサイン、ぶっつけ本番でした」

 相手投手の暴投で、今度は二塁から本塁を目指して走った。「絶対、本塁にかえってこい」と送り出してくれた仲間や監督の思いに応えたかった。俊足を飛ばして一気に本塁へ滑り込んだ。

 チームは追い上げムードとなり、昨夏の優勝校を相手に内野安打などで満塁とする意地を見せた。

 試合には敗れた。でも、磨いてきた足を生かして1点をもぎ取った。「言葉に表せないくらい、うれしい。これから先のつらいことも乗り越えていける、と思える、そんな1点でした」(八百板一平)

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