苦難を乗り越えバッター・大谷の進化
去年受けた右ひじの手術の影響でバッターに専念する形で始まった大谷選手の大リーグ7年目のシーズンは思いもしない出来事とともにスタートしました。
韓国で行われた開幕シリーズのさなか、大リーグ移籍時から公私ともに大谷選手を支えていた水原一平氏の違法賭博をめぐる問題が発覚します。
このスキャンダルによって大谷選手は開幕直後から捜査機関への協力などを余儀なくされました。
のちに大谷選手自身も「睡眠が足りていない日が続いていた」とプレーに影響が出ていたことを明かしています。
そうした中、待望の今シーズン初ホームランは開幕から自身最長となる9試合目、41打席目に出ました。
試合後「早く打ちたいという気持ちで、どんどんいい打席からかけ離れていた。1本出て安心している」と笑顔で話しました。
その後、当局の捜査が一段落すると徐々に調子を取り戻し、特に得意の6月の後半には立て続けにホームランを打つなど一気に打撃成績のランキング上位に駆け上がりました。
◇今季打撃成績(シーズン前半終了時点)
▽ホームラン:29本(リーグ1位)
▽打率:3割1分6厘(リーグ2位)
▽打点:69(リーグ3位)
▽盗塁:23(リーグ3位タイ)
▽長打率:6割3分5厘(リーグ1位)
▽出塁率:4割(リーグ4位)
▽長打率と出塁率を足したOPS:1.035(リーグ1位)
歴史的記録達成への期待 不可欠なピースは
大リーグの公式サイトをはじめ、多くのアメリカメディアはここまでの成績からすでに大谷選手をシーズンMVP=最優秀選手の筆頭候補にあげています。
このほかにも
『2年連続のホームラン王(昨季のア・リーグに続いて)』
『大リーグ 日本選手初の三冠王』
『ホームラン40本40盗塁(大リーグで過去5人達成)』
『大リーグ史上初 ホームラン50本30盗塁』
大谷選手が達成する可能性があるとされる歴史的な記録は枚挙にいとまがありません。
その快挙を成し遂げるためシーズン後半戦のプレーでカギを握りそうなのが「ストライクゾーンの見極め」です。
ここまでの大谷選手についてドジャースのロバーツ監督は「チャンスでアグレッシブになりすぎることがある」と指摘していて、シーズン序盤には大谷選手を監督室に呼び、いい状態と悪い状態の時のストライクゾーンの見極め方などを一緒に比較しました。
大谷選手自身、6月に入ってバットを使ってホームプレートからの距離を測って立ち位置を確認する新しいルーティーンを取り入れて修正し不調を脱しました。
ロバーツ監督は「ストライクゾーンの規律さえ守ることができれば、翔平は惑星最高のバッターだ」と評価しています。
より一層、各チームからのマークが厳しくなるシーズン後半戦でもストライクゾーンを意識したバッティングを保つことができれば「バッター・大谷」に隙はありません。
「ピッチャー・大谷」復活への道は
大谷翔平 選手
「僕の中ではリハビリがしっかり順調に来て、試合にこれだけ出られたことがいちばんよかった」
シーズン前半を総括した時の大谷選手のことばです。
バッターとしての活躍に目を奪われがちですが、『二刀流』にこだわりを持つ大谷選手ならではの強い思いをにじませるひと言でした。
3月下旬から再開し、ほぼ2日に1回のペースで行っているキャッチボールは、当初10メートルほどの距離でしたが、現在は30メートル以上にまで伸びています。
さらに球速は140キロに近づき、ときおり変化球も交えるなど、着実にピッチャーとしての復帰が近づいていることを感じさせています。
プライアー投手コーチは、ポストシーズンの時期にはマウンドに上がって実際にバッターと対戦する段階まで進む可能性を示唆しています。
2019年のシーズンに一度、右ひじの手術のリハビリを経験している大谷選手は「少しずつ進んでいくなかでも、また1歩下がってということはこれからの方が多いと思う」と復帰までの道筋が平たんではないと明かしました。
バッターとしての結果に期待が高まるシーズン後半の戦いと、強度が増すピッチャーとしてのリハビリをどう両立するのかは、大きなチャレンジとなりそうです。
”世界一”を手にするために 後半戦の戦いは
シーズン前半戦を終えてドジャースは56勝41敗とナショナルリーグ西部地区の1位を独走し、大谷選手にとって初となるポストシーズン進出はほぼ間違いないとされています。
大谷選手やホームラン19本を打っているテオスカー・ヘルナンデス選手など、新戦力が結果を出し、チームのホームラン129本はリーグトップ、総得点「479」はリーグ2位と打線は前評判どおりの破壊力を見せました。
一方で、ポストシーズンの戦いを見据えると不安要素も顕在化しています。
サードのマンシー選手や今シーズンからショートに転向したベッツ選手などけが人が相次ぎ、内野手が固定できない状況が続いています。
投手陣の状態はさらに深刻で、山本由伸投手をはじめグラスナウ投手、ビューラー投手など先発陣でエース級の活躍を期待されていたピッチャーが相次いで離脱し、中継ぎ陣への負担が増したことで徐々に大量失点を許す試合が増えました。
7月のチーム防御率は6.56と両リーグ通じてもっとも悪い数字です。
オールスターゲーム前にはリーグ優勝を争うライバルとなるフィリーズとの3連戦で3連敗を喫するなどシーズン序盤の勢いを失っているのは明らかで、アメリカメディアは今月30日のトレード期限を前にピッチャーや内野手の大型補強を予想しています。
ドジャースへの移籍直後から「目標はワールドチャンピオン」と繰り返し世界一への思いを口にしてきた大谷選手は、圧倒的なスタッツを残しながらも「個人の成績はほぼ把握していない」と話し、常にチームの勝利を念頭に置いてきました。
シーズン後半戦もチームの先頭に立って世界一という目標の前に立ちはだかるさまざまな障壁を打ち破る大谷選手から目が離せません。
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