(27日、第106回全国高校野球選手権岐阜大会決勝、岐阜城北6―5県岐阜商)
岐阜城北の1点リードで迎えた延長十一回2死一、二塁。県岐阜商の打席に寺前雄貴選手(3年)が入った。九回に特大の適時三塁打を打たれた相手だ。
最速144キロを誇るエース中本陽大投手(同)は決心した。「直球で押し切る。打たれたっていい」。全球を直球で勝負し、力のない内野フライに打ち取って甲子園出場を決めた。
初回に2点を先制された。相手は春の県大会の王者だ。「打線が強いことは分かっていました。想定内でした」
帽子のつばに「ダークホース」と書いている。ノーシードから大垣日大や岐阜第一など強豪を破り勝ち上がってきた。「挑戦するだけでした」。
二回以降は立ち直り、得点を許さない。チームは五回に追いつき、県岐阜商のエース森厳徳投手(同)との投手戦に。秋田和哉監督が「バランス良く投げていた。今までの中本と全然違う。何かをつかんだ」と驚く投球を見せた。
試合は九回に2点を勝ち越すが、その裏に追いつかれてタイブレークの延長戦へ。十一回に1点を勝ち越し、甲子園まであとアウト三つ。ここで県岐阜商は無死一、二塁からの送りバントを仕掛けてきた。中本投手は投前ゴロをつかむと矢のような送球を三塁へ。
セーフならサヨナラ負けのリスクを背負う。「一か八かでした」。判定はアウト。
「いつも『攻める守備』を心がけてきました。緊迫した場面でも攻められたのは自分とチームの成長だと思います」。試合の行方は決まった。
150球の熱投で完投。ゲームセットの瞬間、中本投手の周りに仲間たちが一気に集まり、歓喜の輪ができた。「仲間に救われてばかりでした。心が折れそうな時も仲間がいたから投げられた。ありがとうと言いたいです」(高原敦)
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