陸上のサニブラウン アブデルハキーム選手(25)です。陸上競技のパリオリンピック代表の多くは6月の日本選手権で決まりますが、サニブラウン選手の場合は去年の世界選手権に入賞し、日本人最上位ということで、この後に参加標準記録の10秒00を突破すれば、パリオリンピック内定という流れになります。
松岡修造さんは8年前の2016年、サニブラウン選手が高校生の時から話を聞いています。その時から「オリンピックで金メダルを取る」と話していました。今回、アメリカに行って話を聞いてきました。
■過去最高の成績でも…「全然ダメ」「エキストラ」
去年、世界選手権の決勝に2大会連続で立ったサニブラウン選手。日本人過去最高の6位でしたが、本人の表情は…。 松岡さん「日本人として考えてすごいんですけど、そんなに喜んでいない」 サニブラウン選手
「めちゃくちゃ悔しいですね」 松岡さん
「悔しいんですか?」 サニブラウン選手
「決勝に行ってるだけで何もしていないので、そこの舞台にいるエキストラって感じですね。完全に。メダルの戦いに絡めていない時点で『全然ダメ』だと思いますね」 過去最高の成績にも全く満足せず、「全然ダメ」と言い切るサニブラウン選手。すでにその目は、パリオリンピックでのメダルを見据えています。
その自信と意識の高さは、彼の練習環境も大きく影響しているんです。
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■“世界最高峰のプロ集団”で、大谷翔平と同トレーニング■“世界最高峰のプロ集団”で、大谷翔平と同トレーニング
松岡さん「あそこでハキームさん練習していますね」
現在、プロ選手として活動するサニブラウン選手は、超一流の選手が集まったプロチーム「タンブルウィードTC」に所属しています。
東京オリンピックの100メートル金メダリスト、L.ジェイコブズ選手(29)がいます。 200メートルの金メダリスト、A.ドグラス選手(29)もいます。少数精鋭のチームは、世界大会のメダリストたちばかり。まさに「世界最高峰のプロ集団」です!
松岡さん「五輪金メダリストが2人いるというのは、何をくれるんですか?」 サニブラウン選手
「やはりこの環境でずっと練習してると、もう、いつも練習してる人たちと決勝に残る人たちと大体一緒くらいなんで、自分を信じられるようにはなったと思います。自分の競技力を。(世界大会では)怖いというよりは『一泡、ふかしてやるぞ』とい感じでいつも決勝に挑んでいますね」
この日の練習でサニブラウン選手が行っていたのは…。腰に何か着けて走っています。実はこれ、ドジャースの大谷翔平選手も使っていた、「1080(テンエイティー)スプリント」と呼ばれるトレーニング機器です。
腰にワイヤーを着けて、最大30キロの負荷を掛け、足腰の強化ができたり、最高速度や一歩ずつの速度まで細かく計測できるんです。
サニブラウン選手「自分の感覚だけでは限界な部分もあるので、マシンもそうですし、コーチの目とアドバイスでいろいろと絡め合って練習が成り立っている感じですね」
この他にも、自分の走りの様々なデータを取って、科学的に分析もしています。
サニブラウン選手「トップスプリンターを300人くらい計測して、そこから走りのモデルのようなものを作って、それは棒人間なんですけど。それと自分の走りを合わせて比較して、今年は『モデルより速くて、めちゃくちゃ良いぞ』って言われたんで」 松岡さん
「モデルに勝ったんですか?」 サニブラウン選手
「はい」 松岡さん
「技術を直して、正しい、一番人間が速く走れるフォームに近くなっているっていうか?」 サニブラウン選手
「はい」
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■「余計なことしていた」…スタートを改良■「余計なことしていた」…スタートを改良
世界一の選手と日々練習し、最先端のトレーニング環境で、自信とともにこの冬に手に入れた武器があります。
サニブラウン選手「やはり自分の中の良いスタートをしっかりできるようにしてますね」 松岡さん
「それは何が変わりました?」 サニブラウン選手
「スタートする時ってどうしても前までは、スターティングブロックから出る時にそのまま足をバーンって出るのではなくて、後ろに足を巻いてから前に振り出すような動きをしてたので」
スタートで「足を巻いてから前に振り出す」とは?サニブラウン選手に、分かりやすく実演してもらいました。
サニブラウン選手「ここから、この後ろ足がこのまま前に行くんじゃなくて、これが後ろに上がってから前に来てたんですよ。だからそのまま1で行くのではなくて、1・2って動いてたんですよ」 松岡さん
「なんでそんな余計なことしたんですか?(笑)」 サニブラウン選手
「そうなんですよ。余計なんですけど(笑)」 注目は左足の一歩目。改良前は、左足を巻き上げてから、前に出していたこの動き。左足を巻き上げる動きが、余分でした。
改良後は、これを修正。巻き上げずに、前にすっと出せるようになったんです。実際の映像を正面から見ると、左足の高さはそこまでは変わらないのですが、去年は足を外側に巻いて出しています。スタートで巻き上げる動きが省けたことで、振り出す足の軌道も改善されたんです。
サニブラウン選手「去年の11月くらいに練習をやっていて、ふと『あれ、これじゃない?』という感じの動きができて」 松岡さん
「できた?!」 サニブラウン選手
「そこから反復的にできるようになって、もう感覚ですね。本当に」 松岡さん
「やっていくなかで見つけていったわけですね」 サニブラウン選手
「はい」
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■自己ベスト超える「9秒8」で“ぶっちぎり勝ち”■自己ベスト超える「9秒8」で“ぶっちぎり勝ち”
先月23日。改良したスタートを試す場がやってきました。今シーズン初の100メートルです。
タイムは…10秒02!シーズン初戦にもかかわらず、パリオリンピック内定条件となる10秒00まで、あとちょっとです!上々の滑り出しです。
松岡さん「タイムを考えると、自己ベストの9秒97、パリ五輪での壁のタイムってどれくらいだと思っていますか?」 サニブラウン選手
「まぁ『9秒8』は出さなきゃいけないって思ってるんで」 松岡さん
「8!?」 サニブラウン選手
「はい」 松岡さん
「では、9秒8いきますか?」 サニブラウン選手
「はい」 松岡さん
「そこまでいかなきゃいけないですか?!」 サニブラウン選手
「はい。やっぱり誰もが勝つと思ってないんで、そこをぶっちぎって勝ちたいって想像はいつもしてますね」 松岡さん
「ぶっちぎり勝ち?」 サニブラウン選手
「はい!」
(「報道ステーション」2024年4月8日放送分より)
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