(28日、第106回全国高校野球選手権兵庫大会決勝 報徳学園4―0明石商)

 試合は五回まで緊迫した投手戦が続いた。安打は、報徳学園が2、明石商は4。勝利をたぐり寄せたのは報徳学園バッテリーの冷静な分析だった。

 報徳学園の先発はエース今朝丸裕喜投手(3年)。二、三回には得点圏に走者を背負ったが、直球を軸に無失点に切り抜ける。五回には中堅手の福留希空主将(3年)が懸命に背走して好捕。今朝丸投手はグラブをたたいて感謝した。

 一方の明石商は、先発の藤井翔大投手(3年)の制球が定まらない。準々決勝、準決勝で連続完封していたエース横山康瑛投手(2年)を二回1死一、二塁から起用する。右ひじに張りを感じていたが「心の準備はできていた」と横山投手。2人を凡打に抑え、失点を許さない。その後もきわどいコースに投げ分け、高まりつつあった報徳学園の攻撃ムードを沈めた。

 五回終了後のグラウンド整備中、今朝丸投手と徳田拓朗捕手(3年)は話し合った。明石商の打者が、打席の内側ぎりぎりに立ち、バットを短く持って直球を狙っているため配球を変えることにした。

 「タイミングをずらすため、カーブを多く投げよう」。その判断がはまった。六回から八回まですべて三者凡退に抑えた。

 待望の援護点をもらったのは六回。1死二塁のチャンスをつくる。変化球が高めに浮き始めていた横山投手を攻め、1点を奪った。

 失点する直前、横山投手はマウンドに駆け寄ってきた松浦悠馬捕手(3年)から「ここやぞ。集中や」と声をかけられていた。だが、この試合で投球の柱にしていたスライダーが浮くのを、相手打線は見逃してくれなかった。「低めに球を集めるのが自分の投球。それができなくて、申し訳ない」と下を向いた。

 4点リードで迎えた九回、今朝丸投手は最後の打者を右飛に抑え、人さし指を突き上げた。

 報徳学園は今春の選抜大会決勝で、健大高崎(群馬)に2―3で逆転負けして、2年連続の準優勝だった。健大高崎は今夏の甲子園出場をすでに決めている。今朝丸投手は試合後、「甲子園で健大高崎にリベンジして、今度こそ優勝したい」と誓った。(森直由、真常法彦)

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