混戦になった第106回全国高校野球選手権宮崎大会は、宮崎商の3年ぶり6回目の優勝で閉幕した。8強に残ったシードは6チームと順当だったが、勝敗や試合内容は紙一重。最後までどこが有力か予測が難しい大会だった。

 混戦が確実になったのは大会5日目。初戦に臨んだシード4校のうち、第1シードの延岡学園が延長タイブレークの末に辛勝。宮崎商も一時は3点をリードされ、小林西は1点差勝ちだった。

 延岡学園は次戦もタイブレーク。結局、準々決勝で富島に競り負けた。第5シードだった日章学園は、初戦で妻に敗れた。

 反発を抑えた新基準のバットのため、スタンドに届く本塁打が減少。県高野連のまとめでは、昨夏8本だった本塁打はランニングを含め3本にとどまった。逆に、四死球や失策が得点につながるケースが目立った。

 ノーシードの都城は、「もともと打撃はいい方」(前田悠斗主将)だったが、基準変更を考えてバットを振り込み、3、4本と安打が連続するつなぐ打線で4強まで勝ち進んだ。今大会まで、公式戦で勝ち星がなかった宮崎大宮は、逆に守備に練習の時間を割いてきた成果が表れ、失策を減らして2勝をあげた。

 高校生全体の数が減るなかで、参加した46チームのなかには、少ない部員で観客を沸かせたチームもあった。高千穂は試合成立ギリギリの9人。昨夏は出場しなかった飯野は、高城との連合チームで参加した。

 猛暑の中、ほとんどの試合でクーリングタイムが設けられた。2会場同じ宮崎市内にもかかわらず、アイビースタジアムだけ雨で試合が中止になる天候不順も選手の調整や大会運営を難しくした。

 そんななか、強打が看板の宮崎商が頂点に上り詰めた要因は、安定した投手力が長打力とかみ合ったことにある。

 5試合すべて継投で、チーム防御率は1.40。5月ごろまでは、打線がしめるとエース級の投手には簡単に抑えられ、投手陣が持ちこたえられないもろさがあった。だが、今大会は違った。四回までに3点を先行された初戦の佐土原戦では、すぐに点を奪い返し、犠飛でも点を加えるしぶとさがあった。次の宮崎学園戦は打線が長打を絡めて二回までに2点を先取すると、先発小野壮真投手が6回を零封した。

 準々決勝の宮崎日大戦でも初回に1点を先制されたが、その後は先発の上山純平投手が七回まで毎回、3人で打ち取り、流れを引き寄せた。準決勝の日南学園戦は、小刻みに点を加え、隙を見せなかった。

 準優勝の富島は、延岡学園の好投手2人を攻略した集中力や、都城をかき回した機動力で「チームとしての戦い」を見せてくれた。

 4月に高校野球取材を始めた当初は、負けたチームがサバサバしている印象だった。だが、今大会、秋や春に結果が出なかった選手たちが、敗戦の悔しさ一つ一つを心に刻み、雪辱をかけて臨んでいたことを思い知った。

 高校野球は全力プレーが代名詞と言われるが、力の源には選手それぞれの物語があった。(中島健)

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