パリオリンピック体操男子団体では、見事な逆転勝利で金メダルを獲得しました。なぜ奇跡の大逆転が起きたのか?元体操日本代表の池谷幸雄さんが解説します。
■奇跡生んだカギ「F難度で重圧」
(Q.試合展開を振り返ります。最初の種目・ゆかが終わった時点で、日本は43.266点、中国は42.532点、点差は0.734点で好スタートを切ります。その後、中国にリードを許しました。最終種目・鉄棒の前に行われた平行棒の時点で日本は216.029点、中国は219.296点で、点差は3.267点。この点差は、どう見ればいいですか?) 池谷さん「普通にやれば、絶対に順位は変わらないです。多少の失敗があっても、変わらない。3点というのはそれくらい大きいです。東京オリンピックで負けた時は0.1点でしたから。それが3点もあるわけですから、中国の選手にとっては余裕があるなと。もう日本選手は追いかけるしかない、挑むしかないという感じでしたから、追う方が強かったというのはあります」
(Q.なかなか見たことない逆転劇ですけども、主要大会でほとんどない?)
池谷さん「僕の記憶にある中では、3点差での逆転はほとんどないかなと」
(Q.池谷さんの記憶の中でも、初めて?)
池谷さん「1点から2点弱の差ならあった気がしますが、3点差はなかなかない。僕もこの5種目で3.267点差があるので、諦めていました」 (Q.諦めもあったということですが、なぜ奇跡の大逆転ができたのでしょうか。勝利のポイント、まず一つ目は「中国へのプレッシャー」です) 池谷さん
「スペシャリストの杉野正尭選手がフル構成で、技も抜かずにしっかり演技をしました。鉄棒1人目の杉野選手は、難しい技を決めて成功させました。すると、中国の2人目が着地で乱れが生じました。焦りがあったと思います。その後、岡慎之助選手が完璧に決めてくれました。中国の選手は相当なプレッシャーだったと思います。一人目がやらかしている状況ですから。スペシャリストなので自信があるはずですが、それだけのプレッシャーがあり、初めから動きがおかしかったです」
(Q.緊張やプレッシャーによって、二度落下することは普通にありますか?)
池谷さん「無くはないです。連鎖で落下することもあります。1回目の落下した時は思い切ってやった結果、遠くなってしまいました。2回目は絶対に持たなきゃと思って、近くでやりすぎた。手で持たなきゃいけないのに、持てずに離れてしまいました。この気持ちが全部演技に出てしまいましたね」
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■奇跡生んだカギ「勝利への引き算」■奇跡生んだカギ「勝利への引き算」
(Q.大きな舞台のオリンピックだからこそのプレッシャーかもしれません。もう一つの勝利のポイントは「勝利への引き算」です) 池谷さん「予選で6.6あった演技構成を、決勝戦では橋本大輝選手が“開脚トカチェフ”と“アドラー1回ひねり”を抜いた、0.6少ない6.0の演技構成でした。なぜかというと、2人が終わった時点で日本のほうが0.6点ほどリードしていたので、6.0の演技構成でもいけると踏んだのです。Eスコアの10点満点から引かれる点数を少なくし、最後の着地までしっかりと演技をするための演技構成にしたのが勝利に繋がった」
(Q.この後は個人総合なども残っていますが、今後の期待は?)
池谷さん「岡選手と橋本選手はどちらもメダルを狙える実力があり、金メダルを狙っています。岡選手は、試合中にどんどん実力を上げている感じです。ぜひ2人の活躍に期待してほしいです」
(スーパーJチャンネル「newsのハテナ」2024年7月30日放送)
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