得意種目での敗退から…
パリオリンピック、大会2日目の28日。大学1年生の松下知之選手が銀メダルを獲得し大きくわいたその裏で、鈴木選手は今大会最初の戦いを終えました。
得意の100メートル平泳ぎで準決勝敗退。
タイムもことし3月の代表選考の大会でマークした自己ベストのタイムからもおよそ1秒遅れていて、この1年では見たことのないような、悔しさを押し殺した表情でインタビューに応じました。
鈴木聡美 選手
「非常に悔しい結果だった。自分を超えていかないかぎり、壁は乗り越えられないないと痛感している」
残るは女子200メートル平泳ぎ。
「まだ仕事が残っているので、気持ちを切り替えて頑張っていきたい」と語りました。
前回 東京五輪出場を逃しても
2012年のロンドン大会で3つのメダルを手にして以降、泳ぎを崩すなどして思うような成績が残せない日々。
東京大会前、新型コロナウイルスの感染が拡大したときには「このまま競技をやっていていいのかと、水泳をやりたくないと思うくらい、心をかき乱していた」と影響もあって、自国開催のオリンピック出場を逃しました。
苦しい時間を経てつかんだ3回目のオリンピック。
“このままでは終われない”
その思いは、敗れた100メートル平泳ぎの決勝、金メダルを獲得した南アフリカのタチアナ・スミス選手がラスト50メートルで追い上げて逆転で勝利したレースを目の前で見てさらに増しました。
「自分にもあのような後半の強い力が必要だと、非常にいい刺激をもらった。勢いがないとダメなんだと、そういう点を見せてくれたトップ選手に感謝したい」
12年ぶりの五輪決勝へ
決勝に残れなかった悔しさとトップ選手を見て再び湧き出た向上心を胸に、200メートル平泳ぎに臨んだ鈴木選手。
テンポとスピードが求められる100メートルのレースから、伸びやかなストロークを生かした大きな泳ぎにうまく切り替え、予選・準決勝と通過していきました。
そして迎えた12年ぶりのオリンピックの決勝。
鈴木選手を長年指導し、厳しい練習を課してきた神田忠彦コーチはウォーミングアップで泳ぎにキレが出ていたのを見て「上位2人は抜けているが、3位はねらえる」と目標を定め「自分の泳ぎだけに向きあって、ラスト、今までやってきた練習を思い出して頑張りなさい」と送り出しました。
1番端の8レーンで飛び込んだ鈴木選手、この日も伸びのある泳ぎで最初の50メートルを4番手でターンし、上位に食らいついていきます。
そして勝負をかけた最後の50メートル。
テンポを上げた鈴木選手は3番手の選手に迫りますがわずかに届かず、4位でフィニッシュ。
それでもタイムはことし3月の代表選考の大会のタイムより0秒55縮め、特に100メートル平泳ぎ決勝で大きな刺激を受けたラスト50メートルを、準決勝より0秒49も速く泳いだことが好記録につながりました。
“自分でも褒めてあげたい”
メダル獲得を逃した鈴木選手は次のように語りました。
「あと少しで銅メダルだった。3位と4位では全く価値が違うということもあり、すごく悔しい。この決勝が今までの練習も含めていちばん気持ちよく泳げた200メートルだったので、水泳って難しいなという気持ちになった」
一方で「代表選考の大会よりも速いタイムで泳ぐ、そして決勝進出するという目標は最低限クリアできたので、そこは自分でも褒めてあげたい」と話した鈴木選手。
レースを見守った神田コーチも「勢いよく潔く泳いでくれたのでよかった。本当に年齢はあまり関係なくて人それぞれ違うわけだから、環境が整えばいろいろな場面でチャンスが出てくる。そういう意味では、鈴木選手は水泳界だけではない影響力を持っているのかなと思う」と話しました。
鈴木選手は今後についてはコーチと相談するとしながらも「好調の兆しが見えたということは、もしかしたらまだ続行ということもあると思う」と話しました。
33歳、日本の競泳界最年長出場にして世界の4位。
年齢にとらわれず、悔しさを成長の糧に変え、飽くなき向上心で挑戦し続ける姿勢は、メダルには代えがたいものを私たちに与えてくれました。
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“まだやれる”背中を押してくれた方たちに感謝 鈴木聡美 33歳
【NHKニュース】パリオリンピック2024
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