第106回全国高校野球選手権大会第2日の8日、大阪桐蔭は1回戦で興南(沖縄)と対戦した。三回に吉田の三塁打などで3点を先制すると、四回には6番増田、7番岡江、8番山路の3連打などもあり2点を追加。先発の2年生中野が完封した。2回戦は第8日の第2試合(14日午前10時35分開始予定)で小松大谷(石川)と戦う。

 (8日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 大阪桐蔭5―0興南)

 度重なるケガを乗り越え、もう一度甲子園の舞台に立てた。

 でも大阪桐蔭の吉田翔輝(しょうき)選手(3年)は、それだけで満足しない。

 1番センターで先発出場。0―0で迎えた三回裏、1死一、二塁の好機で打順が回ってきた。「絶対につなげる」と左打席に入る。5球目に来た真ん中の直球を、投手の足元めがけて振り抜くと、打球はぐんぐん伸びて右翼手の頭を越える。三塁に滑り込むと、両腕を上げてガッツポーズを見せた。

 2点を先制する適時三塁打だけではない。五回の守備では2死三塁のピンチで、センターに鋭いライナーが飛んだ。落下地点に猛然と突っ込む吉田選手。頭から飛び込むと、伸ばした右腕の先のグラブで飛球を捉える。ケガをも恐れないダイビングキャッチ。球場は大歓声に包まれるなか立ち上がると、右腕をくるっと回しながら味方のベンチ方向へと向かった。

 ここまでの道のりは決して簡単ではなかった。

 吉田選手は今春の選抜大会にも出場。ただ準々決勝で、一塁帰塁の際に右肩を脱臼した。治療に1カ月半。5月に復帰したが、バットもろくに振れなかった。

 やっと感覚を取り戻せたと思った6月、今度は遠征中に左ひざを疲労骨折した。

 全治2カ月と聞いた。焦った。「大阪大会に間に合わない」と。でも、ネガティブになりそうな気持ちをぐっとこらえた。

 身長167センチ。「自分が生きる道は長打力ではない」と低く鋭い打球を飛ばすことを心がける。50メートル6.0秒という俊足と強肩を生かし、成果を出し続けてきた。何より負けず嫌い。落ち込むのは性に合わない。

 上半身のウェートトレーニングや素振りを繰り返した。ブルペンでチームメートが投げる球を見て、感覚が鈍らないようにした。さらにカルシウムを多く取った。

 大阪大会5回戦の前日。医師から出場許可が出た。西谷浩一監督に直訴して出場。それから決勝までに10打数4安打2打点と活躍した。西谷監督は「気持ちが強く頼もしい選手」、コーチ陣も「根性がある」と評する。

 甲子園の初戦を突破し、自身は3打数1安打3打点。「うれしい」と言いつつも、「目標は日本一だけなんで」ときっぱり。ダイビングキャッチの後、大事を取って交代したが、「ダイビングキャッチは体が自然と動いていた。いけると思った。体は全然大丈夫です」と早くも次の試合を見据えた。(西晃奈)

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