(10日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 神村学園―木更津総合)

 「いい球来てるよ」「表情が硬いよ、明るく!」「ナイススイング」。神村学園のベンチからは、仲間を鼓舞するかけ声が途絶えることはない。

 声の主は、小山琳太選手(2年)。小田大介監督の隣が、ベンチでの定位置だ。監督のつぶやき、選手たちの表情や動き、相手選手の癖……。試合中、頭をフル回転させて内容を考え、声に出す。「チームが不安になった時にもポジティブなことをずっと言ってくれ、気持ちを落ち着かせてくれる」。小田監督がそう評価する、声出しのスペシャリストだ。

 熊本市出身。主将を務めた中学時代の硬式クラブチームでも、声かけを心がけていた。当時は一塁手で、投手へ球を返すときには必ず、前向きな言葉を添えた。その経験が今、生きている。

 憧れの存在がいる。神村学園が昨夏、甲子園に出場した時の主将、今岡歩夢さんだ。味方の安打はもちろん、四球でもガッツポーズ。守備でアウトを重ねるたびに、仲間を全力でほめ、盛り上げる。プレーだけでなく、声や態度でも4強入りを支えた。

 チームは今春の選抜にも出場し、春の九州大会で準優勝。結果だけをみれば順調だが、試合内容もチームの雰囲気も、決して良い状態とはいえなかった。

 夏の甲子園に再び出場し、勝ち抜くには、前の主将のような盛り上げ役が必要だった。その「切り札」として小田監督が6月ごろ、木下蓮太朗選手(2年)とともにベンチ入りメンバーに登用したのが、小山選手だった。

 練習試合からさっそく、期待に応える効果的な声かけを始めた。鹿児島大会では、伝令としても活躍。決勝の九回裏、無死満塁のピンチを迎えると、マウンドに集まったバッテリーと内野手に小田監督の指示を伝えた後、付け加えた。「試合に勝ったら一日ハッピーな気持ちになりますよね」。今村拓未投手(3年)は3連続奪三振で切り抜け、2年連続の甲子園を決めた。

 「小山がいなかったら、鹿児島大会を勝ち抜けたかどうか、正直わかりません」と川下晃汰主将は振り返る。小山選手は意気込む。「甲子園でもムードづくりや声出しでチームを勝たせたい」(宮田富士男)

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