ボルダー&リードは「課題」と呼ばれる4つのコースを登った数で競うボルダーラウンドと、1回の挑戦で登った高さを競うリードラウンドの合計点で争われます。

<ボルダーラウンド>7位と出遅れる

オリンピック初出場の森選手は準決勝4位で10日の決勝に進み、前半のボルダーラウンドでは4つの課題のうち1つしか登り切れず39ポイントで、8人中7位と出遅れました

<リードラウンド>トップのポイントをマーク

得意としている後半のリードラウンドでは、持ち味の指の力の強さと柔軟性を生かして高度を上げていき、完登直前となる最後のホールドに手をかけたところで落下しましたが後半トップとなる96.1ポイントをマークしました。

銅メダル選手に12.3ポイント届かず

この結果、森選手はボルダーラウンドとの合計が135.1ポイントとなり、銅メダルの選手には12.3ポイント届かず4位となりました。

金メダルは168.5ポイントを出したスロベニアのヤンヤ・ガンブレット選手で、前回の東京大会の女子複合に続き2大会連続で金メダルを獲得しました。銀メダルはアメリカのブルック・ラバトゥ選手、銅メダルはオーストリアのジェシカ・ピルツ選手でした。

「最後は自分らしい登りで終われた」

森秋彩選手
「表彰台を逃してしまったので悔しいです。決勝のリードラウンドは緊張しましたが、ミス無く楽しく登ることができました。最後は自分らしい登りで終われたと思います」

憧れの背中を追いかけて…

初めてのオリンピックで森秋彩選手は憧れの存在の背中を追いかけ、大舞台に挑みました。茨城県出身の森選手にとって、同郷で東京オリンピック銅メダリストの野口啓代さんはクライミングを始めた時からの憧れであり、尊敬してきた存在でした。

森秋彩選手
「ずっと啓代さんを目標にしていた。クライミングの強さだけではなく、啓代さんのような人間力のあるアスリートになりたいと思ってきた」

同郷・野口啓代さん 東京大会銅メダルの登りに感銘

野口啓代選手(東京大会)

その野口さんの引退試合となった3年前の東京オリンピックで銅メダルを獲得した登りに、森選手は強い感銘を受けたといいます。

「自分もこの舞台に立ってみたい…」

森秋彩選手
「今までの思いが全部詰まっているような1手1手を振り絞った登りで、啓代さんは本当にかっこいいなと思った。自分も見ている人がもっと頑張ろうと思えるような登りをしたいと思った」

そして「啓代さんの登りを見て自分もこの舞台に立ってみたい、もしかしたら自分も行けるかもしれないと希望になった」と、野口さんの存在がオリンピックへの思いを強くさせたことを明かしていました。

次は自分が子どもたちの目標に…

東京大会が終わった翌年、大学に進学し3年ぶりにワールドカップに出場した森選手は得意のリード種目で世界トップレベルの実力者になりました。去年の世界選手権では日本選手で初めて金メダルを獲得し、パリオリンピックのメダル候補に名乗りを上げました。

それでも森選手は、クライミングでの目的を順位だけには置いていません。かつて自身が憧れの野口さんの登りを見てオリンピックを目指そうと思った状況と同じように、次は自分自身が子どもたちの目標となる存在になりたいと考えてきました。

森秋彩選手
「私の登りを見てクライミングを始めてくれるなど、自分の登りで誰かの人生を動かすことができたと実感する瞬間が優勝することよりも幸せ。高みを目指して頑張っている姿を見てもらいたい」

日本のクライミング界の未来につながるような登りを見せたいと、初めてのオリンピックで果敢に壁に挑みました。

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