不器用で勝てない日々
「私なんかがオリンピックに出ていいのかな」とも一時は話していた元木選手。
その自信のなさが物語るように競技人生は決して順風満帆ではありませんでした。
3歳のころからレスリングを始めましたが、高校3年生のときのインターハイでは今大会53キロ級で金メダルを獲得した当時1年生だった藤波朱理選手から1ポイントも奪えずに完敗しました。
自分の強さを見いだしていく
「そこまでの選手なんだろうな」と思っていたところ、長い腕を生かしたスタイルに光るものを感じたという群馬県の育英大学の柳川美麿監督の目にとまって育英大学に進学。
海外選手の技などを動画で研究しながら自分の得意技を探すことを重視する練習環境は元木選手に合っていたといいます。
長い腕を生かして相手を崩す「アリエフ」と呼ばれる技や低い姿勢で相手の片足を取りにいくタックルなど自分にとっての得意技を見つけながら実力を向上させていきました。
「こんな自分でも勝つ方法、やり方を模索すれば勝てるというのがレスリングの魅力だと思います」とも話していて、その試行錯誤を書き留めたノートは大学時代だけで20冊以上にものぼります。
負けても負けても負けても
成長した元木選手に大きな壁が現れたのが去年の世界選手権。決勝で敗れたキルギスのアイスルー・ティニべコワ選手です。
ことし4月のアジア選手権の決勝でもまたしても苦杯をなめさせられその悔しさは夢に出てくるほどだったといいます。
それでも「オリンピックに出る者としてネガディブになっているのは失礼だと思った。負けを原動力に挑戦者として挑むだけだ」と気持ちを立て直して自分のレスリングにより磨きをかけてきました。
挑戦者として
迎えた初めてのオリンピック。
初戦、準々決勝と磨いてきたタックルや「アリエフ」を有効に使って快勝。
準決勝はノルウェーの選手に5ポイントをリードされる展開となりましたが、豪快な「そり投げ」を決めて逆転勝ちで決勝に進みました。
翌日の決勝、相手のウクライナの選手は準決勝であのティニべコワ選手を破って勝ち上がってきました。
それでも「弱かったりダメだったりした過去の自分を乗り越えた先に金メダルがある」と腹をくくってすべてをぶつけました。
ディフェンスを固める相手にも果敢に片足タックルに入り、次々とポイント重ね、12対1と圧倒。
試合後は「何回も心が折れそうなことがたくさんあったけど多くの方の支えでたどりつくことが出来た。今までの弱かった自分にリベンジすることができた」と大きな充実感がにじんでいるように感じました。
不器用でも、運動神経に恵まれなくても、あきらめずに探求を続け、磨き上げた技でつかみ取った金メダルでした。
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