一度もやったことのない技が五輪で出た。レスリング女子62キロ級の元木咲良は、準決勝の残り2分で2―7の劣勢だった。「金メダルをとりにきたのに、ここで負けてしまうんじゃないか」

 不安に押しつぶされそうだった。組み合ったノルウェー選手からひざ裏に足をかけられ、背中から倒れかけた、その時だった。「フォール負けだけは、だめだ」

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 とっさにブリッジしたら、くっついてきた相手の体が真後ろに飛んでいった。そのまま押さえこみ、起死回生のフォール勝ち。決勝への道が開けた。

 決まった反り投げについて、「怖くて試合どころか練習でもやったことがない。レスリングの神様が助けてくれたんだなって思いました」。恐怖心から解放され、涙が止まらなかった。(藤田絢子)

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