8月の全国高校軟式野球選手権大会(日本高校野球連盟主催、朝日新聞社など後援)は、中京(岐阜)の2度目の3連覇で幕を閉じた。近年強さが際立つ「王者」をこの夏、脅かしたのが53年ぶりに出場した興国(大阪)だった。1回戦で中京に敗れたものの、2―3と肉薄した。どんなチームなのか。
街中のグラウンドに元気な声が響いていた。9月中旬、桃谷野球場(大阪市生野区)で興国の選手たちが白球を追っていた。部員数は78人。大阪府内の高校軟式野球部では一、二を争う多さだ。
「みんな楽しそうに練習していたので」。全国選手権で主将を務めた奥村璃琥(りく)選手(3年)は入部の決め手を振り返る。高校ではソフトボールをしようと考えていたが、見学した時の雰囲気から軟式野球部の門をたたいたという。
五十嵐公三監督(48)が就任した十数年前、部員は20人もいなかった。1971年を最後に全国選手権から遠ざかり、府でも上位に進めていなかった。「まずは一度でいいからベスト4。次に4強に定着する。そうすれば景色が変わってくると思って取り組んだ」
重視したのは実戦を通じた強化と体づくり。毎週のように週末に遠征し、他校との練習試合で勝負感覚を磨いた。平日は筋力トレーニングだけの日を設け、パワーアップを図った。スポーツ推薦の対象クラブとなった数年前から大会での成績はさらに上がり、昨秋と今春の近畿大会で優勝。自信をつけて今夏に臨んだ。
野球から離れた取り組みもある。部員の多くはオフシーズンにあたる12月などに引っ越しのアルバイトをする。保護者の負担を減らし、自立心を育む機会となっている。
今度は大阪府内のライバルが「打倒興国」を掲げて立ち向かってくる。大阪は全国有数の激戦区だ。2017年創部ながら19年に全国選手権4強、22年に準優勝したあべの翔学。大阪府立の河南(かなん)は全国選手権に計6回出場し、18年には準優勝した。浪速や初芝富田林、大商大、都島工なども力がある。
この秋の近畿大会府予選は、9月29日にあった都島工との準決勝に3―1で勝ち、11月に滋賀県で行われる本大会の出場を決めた。五十嵐監督は「小技を絡めながら、長打でも点が取れる変幻自在なチームを作っていきたい」と意気込む。(渋谷正章)
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