圧倒的なピッチング
キャッチャーが構えたミットに糸を引くように突き刺さる、最速150キロを超えるストレート。
関西大4年の金丸夢斗投手が投げ込むボールはこの表現がぴったり当てはまります。
関西学生野球の春と秋のリーグ戦では2年春の途中から、ことし春の開幕戦で敗れるまで破竹の18連勝。
去年秋は6勝0敗、防御率0.35と圧倒的なピッチングでチームを優勝に導きました。
プロ野球のスカウトからは「3年生だった去年のドラフト会議の時点でも間違いなく1位指名だった」という声が上がるほどでした。
日の丸を背負った経験を
その名を一気に全国に知らしめたのが、ことし3月。
大学生ながら日本代表に選ばれ、ヨーロッパ代表との強化試合に先発。
2イニングで4つの三振を奪って完ぺきに抑えました。
チームは6人の投手リレーで最後まで1人のランナーも許さず、完全試合を達成。
金丸投手が流れを呼び込んだ形となり、お立ち台ではプロ野球選手と肩を並べて、笑顔を見せました。
オリックスで3年連続ふた桁勝利をあげている宮城大弥投手から、課題としているスライダーやチェンジアップといった変化球の握りを教えてもらうなどみずからの成長につながる機会となりました。
関西大 金丸夢斗投手
「一流のプロ野球選手は自分を持っていて、余裕があると感じました。注目されてきた経験がないので、なかなか今までどおりにはいかないですけど、光栄なことでうれしく思っています。自分も将来は日本を背負うピッチャーになりたいです」
常に同じ呼吸を意識
飛躍につながったのが呼吸のトレーニングです。
去年春に右ひざを痛めたことをきっかけに、体の使い方やフォームを一から見直すために取り組み始めました。
練習中、ウォーミングアップを終えた金丸投手は1人でブルペン近くのスペースに座り込みます。
ここで取り出したのはストロー。
口にくわえて「口から吸って鼻ではく」呼吸を繰り返します。
さらに逆立ちやブリッジといった不安定な姿勢になり、同じように呼吸ができるかを確認します。
この呼吸トレーニングをピッチング練習の前に毎日30分から1時間かけて行うことで、体に覚えて込ませてきたのです。
関西大 金丸夢斗投手
「緊張したり力んだりしそうな時でもまず呼吸をしっかりする、大事にすることから始めています。ピッチングはマウンドという傾斜がある場所で片足で立つという不安定な状態から投げる。その中でもパフォーマンスをしっかり出せるようにやっています。呼吸を一定にすることで再現性がついてきて、コントロールもよくなりました」
マウンドの状態や、試合展開に左右されることなく、自然といつも同じ呼吸ができるようになったことで、コントロールに磨きがかかったと感じています。
手や指の感覚も一定に
呼吸だけでなく、手や指の感覚も常に一定にしようと練習から創意工夫を凝らしています。
キャッチボールで手にしているのは、大きさと重さが違う2つのボールです。
1つはより大きなソフトボールと、もう1つは通常より200グラムほど重いトレーニング用のボール。
いずれも指先だけで投げようとすると抜けてしまうため、「手のひらから指先に力を伝える」感覚を確認することができるといいます。
呼吸から意識してきた力をボールを離す瞬間に最大限、指先に集中させていくのです。
恩師に感謝の思い
呼吸法と、指先の感覚を磨くことで、抜群のコントロールを身につけた金丸投手。
飛躍を支えた恩師がいます。
プロ野球、阪急で活躍した山口高志さんです。
兵庫の神港橘高校から関西大に進んだ金丸投手にとっては、高校と大学の先輩にあたり、現在は、関西大でアドバイザーとして金丸投手など投手陣を指導しています。
(山口さんの出身高校は神港橘高校の前身の神港高校)
関西大 金丸夢斗投手
「山口さんからは”再現性”。何球投げても同じフォームで投げきれるようにとアドバイスされてきました。いまの自分があるのは山口さんのおかげだと思います」
大きな“夢”を目指して
金丸投手の世代は、高校3年生の時に新型コロナウイルスの感染が拡大。最後の夏は甲子園を目指すことすらできず、不完全燃焼でした。
あれから4年、大学野球のラストイヤーを迎えました。
目指すのはチームとして52年ぶりの全国制覇、そして、その先に大きな夢を見据えています。
関西大 金丸夢斗投手
「高校の時は最後いい形で終わることができず、高校時代のチームメートの思いも背負って野球をしています。今までどおり、自分の持ち味をしっかり出して結果を残すということを意識して上の世界で野球ができたらと思います」
(4月12日「ほっと関西」で放送予定)
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