第65回東日本実業団駅伝が3日、埼玉県庁をスタートし、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にフィニッシュする7区間76.9kmで行われる。各区間の距離と中継点は以下の通り。
1区 11.6km 埼玉県庁~宮原小学校前
2区 9.4km ~北本市南部公民館前
3区 15.1km ~JR行田駅入口
4区 9.5km ~大里農林振興センター前
5区 7.8km ~JR深谷駅前
6区 10.6km ~Honda cars前
7区 12.9km ~熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
かつて“21世紀の駅伝王者”の異名を取ったコニカミノルタだが、ニューイヤー駅伝は8回目の優勝を成し遂げた14年を最後に、東日本実業団駅伝は19年を最後に栄冠から遠ざかっている。今年のニューイヤー駅伝は27位まで落ちてしまった。
名門は今春、宇賀地強新監督(37)が就任し「4年後のニューイヤー駅伝優勝」を目標に再スタートを切った。その第一歩となる駅伝が今回の東日本大会だ。宇賀地新監督の目指す駅伝とは、どんな駅伝なのだろうか。
東日本の区間編成、コース特性を攻略するためのレース展開を
再スタートを切るコニカミノルタの目標は「東日本8位以内」(宇賀地監督)だ。「4年後のニューイヤー優勝から逆算すると、25年は悪くても15位以内に入っておきたい。東日本で8位以内ならニューイヤーの15位を狙うことができます」
東日本大会の過去のレース展開を分析し、「4区が終わった時点の順位でほぼ決まる」と宇賀地監督。コースは一直線の部分が多く、前の選手を視界にとらえやすいことが東日本大会の特徴の1つ。差が大きくなければ追いやすいが、ある程度の差があると、「追っているけど詰まらない」という感覚に襲われる。
また開催時期の関係で、レース後半は気温が上がることもある。そうなると各区間前半で追い上げても、終盤でペースダウンすることも多い。東日本大会で目標達成のためには「4区が終わって8位以内」が必要だ。
今後故障者などが出なければ、インターナショナル区間の2区以外の前半区間に米満怜(26)、名取燎太(26)、宮下隼人(25)の起用を予定している。
米満は20年の箱根駅伝1区区間賞選手。今春宇賀地監督が3年ぶりにキャプテン制度を復活させたとき、自ら手を挙げた積極性のある選手だ。「駅伝が近くなってきて、責任を背負えるようなってきました」と宇賀地監督。名取は高校3年時に全国高校駅伝1区で区間賞を取った選手。「駅伝はどんな流れの中でも崩れません」
宮下は大学2年時に箱根駅伝5区(山登り区間)で区間賞。「練習ではコニカミノルタが全盛時だった頃と同じレベルのトレーニングができています。東日本で殻を破るパフォーマンスをして、さらに高みを目指してほしい」。
チーム全体が夏までは、思った結果が出ず、「良い流れを作れなかった」。それでもやるべきことは、継続して行っていた。10月の最終合宿では「集中してトレーニングができ、かなり上向いてきた」という。
「故障者や体調不良者も出ているので、8位に余裕では入れるとは思っていません。自分たちの力を出し切って初めて、勝ち取ることができる。ミスがあれば目標に届かないこともあり得ますから、チーム全体として緊張感を持ってやっています」
今年は東日本地区のニューイヤー駅伝出場枠が、前回の“12”から“10”に減っている。走り始めてプレッシャーと感じないように、良い展開も悪い展開も想定するなど、「頭の準備もしっかりしていこう」と選手たちと話している。
監督としての初陣に、抜かりはなさそうだ。
「オレが何とかしてやる」という気概
だが、近年の選手は個人種目で良い記録を持っていても、駅伝で悪い展開になったときに力が出せない。コニカミノルタが駅伝で低迷しているのも、そこに一因があったと宇賀地監督は感じている。
「実力、実績もなかったことが大きいのですが、思考の部分の準備、アプローチがやり切れていませんでした」
宇賀地監督が現役の頃は駅伝で想定より悪い順位でタスキを受け取っても、コニカミノルタの選手たちは「オレが何とかしてやる」という気持ちで走っていた。
「私たちより少し上の磯松(大輔、現トヨタ自動車九州コーチ)さんや坪田(智夫、現法大監督)さんたちの黄金時代は、『誰かが遅れてくたらオレが目立てる』というメンタルで駅伝に臨んでいたそうです」
宇賀地監督はさらに、具体性を持たせて話を続けた。
「コーチたちはメニューを考えるとき、選手が目指すところに必要な内容を掘り下げて考えて、自信を持って渡せるようにしないといけません。渡したメニューにはこういう目的がある、としっかり説明する。今までこうやってきたから、ということは根拠にはしないようにしています。それに対して選手たちがこうしたい、と言ったときにはその理由を聞いて、選手とスタッフ双方が納得できるまで話し合う。あとは情報が多く得られる時代になっていますが、選手が本当に自分で考えて取り入れようとしているのか、そこは確認するようにしています。誰か(有名な選手や強いチーム)がそれをやっているから、という理由では、責任が外を向いてしまうんです。結果が良かったときはまだいいのですが、悪かったときに振り返りや分析ではなく、ただの言い訳の羅列になってしまうので。それは絶対に先につながりません」
宇賀地監督がやろうとしていることは、もしかしたら時間がかかることかもしれない。しかし“責任”を明確にする姿勢がチームに根付けば、上手くいかなかったときにも立ち直る術(すべ)になる。
もちろん東日本実業団駅伝では本気で8位を目指してタスキをつなぐが、その後のコニカミノルタが復活していく過程にも注目していくべきだろう。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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