坂本花織「今までの経験でなく新たな経験になった」
注目
【解説】“勝ち方のバリエーション”増やした大会に
◆鍵山優真「欲を出して行きたいと思えた」
◆“りくりゅうペア”「経験積めているのは前向きなこと」
大会前にはジャンプの不調に苦しんでいましたが、この大会では大きなミスなくまとめたことについて、手応えを口にしました。
坂本花織 選手「見ているお客さんや、採点に関わる人たちにも楽しんでもらおうという気持ちで挑む中で思い切ってやった。それによっていい流れが来たので『最初からこうすればよかったんだ』という気付きを得られた。今までの経験に助けられたというよりは、本当に新たな経験になった」
「オリンピックに向けて今シーズンと来シーズンを2年で1つのシーズンと考える 気持ちで取り組んでいる。とにかく1試合ずつ大事にしていきたいと思っている中で、しっかりやりきれば自己ベストも超えられるプログラムだと実感できた。まだまだ葛藤の途中なので、しっかり練習を積んでプログラムを自分のものにして自信をつけていきたい」
坂本選手にとって、ことしのNHK杯は「心身の不調」の中でたどりついた3年ぶりの頂点でした。
大会直前の坂本選手の表情は、“世界女王”という称号には似つかわしくない「不安そのもの」。自身の心と体の両面に起因していました。
まずは「心」。坂本選手は、前向きではない心で今大会を迎えていました。理由は新たなプログラムにあります。オリンピックのプレシーズンとなる今シーズンの坂本選手は「自分の可能性をさらに広げたい」としてフリーでは難しいジャンプの本数を増やし、ジャンプとジャンプの間の“つなぎ”の動きも激しく、体力の消耗が激しいプログラムに挑んでいます。このため後半まで体力を温存する意識を強く持っていました。その意識こそが、心が前向きになっていない要因。競技直前までそのことに気づけませんでした。その心のまま、演技を始めると、前半の滑走のスピードが落ちて勢いに乗れないままジャンプに入ってしまいミスが相次いでいました。
次に「体」。具体的には、左の肩甲骨周辺の凝りです。自身も気づいていなかったという症状でトレーナーがマッサージをした際に見つけたものだったといいます。トレーナーによりますと、明確な原因はわからないということですが、ジャンプの転倒でそこを何度も打ったことが原因の1つとして考えられるということです。坂本選手のジャンプは回転する方向に左肩を強く回すことで勢いをつけるのが特徴だということで「左の肩甲骨の凝り」によって可動域が狭くなったことが、ジャンプの不安定さにつながっていたのです。
こうした、心身の不調は、前半首位に立って迎えた2日目のフリーの日の朝も続いていました。ただ、坂本選手はその現実から目を背けず、朝の公式練習でジャンプのミスが相次いだことを契機に「いっそのこと、きょうは前半から飛ばしていこう」と吹っ切りました。
迎えた本番「開始10秒から走り続ける」という演技を全力で貫き、今シーズンの世界最高得点をマークしました。ようやく笑顔が戻った坂本選手は演技後、満面の笑顔で話しました。
「肩甲骨の状態は大会に向けて日に日によくなり、精神的な面でも力をセーブして滑るのは自分らしくないとわかった。それに気がつけたことがこの大会の収穫だと思う」
この先続く、今シーズンのファイナル、全日本選手権、世界選手権、さらに、1年3か月後のオリンピックへ。坂本選手にとって今回のNHK杯は、決して、100%ではない状態でも勝つことはできるという「勝ち方のバリエーション」をさらに増やした大会になったと言えそうです。
1年3か月後のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックに向けた“予選大会の1つ”と位置づけたNHK杯を振り返りました。
鍵山優真 選手「ミスがありながらも本当に全力で取り組めた。自分が今こういうチャレンジをしているんだと印象づけられた大会だったと思う」
そして今後、目標とする点数について、ショートプログラムで108点以上、フリーではおよそ210点とした上で「より高い点数が取れるように欲を出して行きたいと思えた」と話しました。そのうえで…。
鍵山優真 選手「ステップやスピンで評価を落としてしまう部分もあったので、そこをしっかりと修正して1歩1歩、少しずつでものぼっていきたい」
鍵山選手は11月15日から行われる、グランプリシリーズ第5戦のフィンランド大会にファイナル進出をかけて出場します。
ペアで2位だった三浦璃来選手と木原龍一選手の“りくりゅう”ペアは、昨シーズンはけがで出場できなかったシーズン前半に実戦を積めていることについて「前向きなこと」などと話しました。三浦選手と木原選手の“りくりゅう”ペアはフィギュアスケートのグランプリシリーズ第4戦、NHK杯のペアで、前半トップに立ったものの後半に逆転されて2位でした。
三浦璃来 選手「評価の取りこぼしやミスが出てしまったので次の大会に向けてはそのあたりをしっかり練習してクリアしていきたい。ただ、昨シーズンはけがもあって試合の場数を踏めなかったことを考えるとシーズンの最初から試合の経験が積めていることは前向きなこと」
一方の木原選手は以前からあった腰の違和感について大会期間中に検査を受けたことを明かしました。
木原龍一 選手「骨に異常はなかったし去年のけがの再発でもなく筋肉の疲労から来ている違和感ということだった。練習に制限をかける必要もなく安心している。オリンピックに向けて大切なシーズンではあるが、まずは、けががないように気をつけながら試合の経験を積んでいきたい」
2人は12月にシリーズの上位6組で争うファイナルに出場し、2シーズンぶりの優勝を目指します。
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