丸井織物は自社のスポーツ衣料向け素材をカジメイクの商品に活用する

繊維メーカーの丸井織物(石川県中能登町)は16日、レインコートを手がけるカジメイク(富山県高岡市)を子会社化すると発表した。丸井織物は自社のスポーツ衣料向け素材をカジメイクの商品に活用し、グループを挙げて商品力を高める。カジメイクは一時、新規株式公開(IPO)を目指していたが新型コロナウイルス禍を経て断念し、事業承継先を探していた。

丸井織物は、カジメイクの鍛冶功一社長やその親族などから株式の59.2%を取得する。6月14日のカジメイクの株主総会で承認を得る。買い取り額は公表していない。カジメイクは社名変更せず、鍛冶社長も当面続投する。

カジメイクの年間売上高は約60億円。1925年に和傘の製造で創業し、現在はレインコートや作業着などをホームセンターや自社サイトで販売している。2019年に丸井織物の子会社となったウィル・テキスタイル(東京・中央)と取引がある。

丸井織物は合成繊維の生地を主力とする。23年に持ち株会社「マルオリグループ」(石川県中能登町)を設立し、丸井織物などが傘下に入った。マルオリグループ全体の23年12月期の売上高は245億円。26年までの中期経営計画で、売上高を約3割増の320億円に引き上げる方針を掲げていた。

計画の達成に向けM&A(合併・買収)を進めており、カジメイクを子会社化すると目標達成に大きく近づく。コスト削減や新事業の創出を目指し、数年前から子会社化の検討を進めていた。

事業面の連携では、丸井織物が強みを持つスポーツ向けの生地をカジメイクに供給し、レインコート製品の商品力を高めることを想定する。カジメイクは自転車に乗ったままでも着やすいといった特徴ある商品の開発に取り組んできた。素材メーカーである丸井織物と組むことで、機能性が高い商品を開発しやすくなる。

マルオリグループは消費者が作るイラストや写真を図柄にするオリジナルTシャツ販売事業「UP-T」にも力を入れている。現在はインターネット上の販売にとどまるが、売上高は23年12月期実績で33億円、24年12月期は45億円程度を見込むなど成長を続ける。カジメイクがレインコートの販売で関係が深いホームセンターなどでも受注・販売できるようにする考えだ。

カジメイクはレインコートの販路を広げてきた(本社にある商品展示スペース)

新規事業の創出も視野に入れる。丸井織物の宮本智行専務は「例えばUP-Tのサービスを生かし、カジメイクのレインコートや作業着を顧客のニーズに合わせカスタマイズできたら」と構想を練る。カジメイク以外でも「必要に応じてM&Aを続けていきたい」(宮本専務)と語る。

カジメイクはコロナ禍前の19年ごろには、知名度向上による人材確保を狙いIPOを目指していた。その後、新型コロナ禍の外出自粛でレインコートなどの販売が伸び悩みIPOをいったん断念。自社EC(電子商取引)サイト「アメトハレ」のほか、東京都内の百貨店にネット販売につなげるショールーミング型店舗を出すなど販路拡大に力を入れてきた。

一方で同社を悩ませてきたのは後継者の不在だ。創業家の鍛冶社長の後継者はファミリーや社内にも見当たらず、事業面のシナジーと株式の所有が期待できる連携先を探してきた。丸井織物とカジメイクの本社は車で1時間以内で移動できる距離。地理的な近さもあり、丸井織物の傘下入りを決断した。

(坂田耀、国司田拓児)

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