北拓と商船三井が開設した洋上風力保守の訓練施設(21日、北九州市)

風力発電設備保守で国内最大手の北拓(北海道旭川市)と商船三井が北九州市内に建設していた洋上風力の運用・保守管理(O&M)作業の訓練施設が完成し、21日に報道陣に公開された。国内で初めて高さ23メートルのタワー型の実機を陸上に設置した。洋上を想定した実践的な訓練ができる。10年で作業員1500人の育成を目指す。

タワー型施設は「トランジションピース」と呼ぶ部材で、風車の支柱と海底に固定する基礎構造物をつなぐ。実際には海面付近にある。タワーの横にある船のデッキを模したゴンドラが動いて、洋上の揺れを再現する。同日の竣工式では、船で近づいた想定で作業員がトランジションピースに乗り移り、はしごを登る様子が実演された。

北拓と商船三井が開設した洋上風力保守の訓練施設では船から飛び移る訓練もできる(21日、北九州市)

タワー型施設は頂上にアクセスデッキ、上部に作業場となるプラットフォームを設けた。船からの乗り移りのほか、ヘリコプターからデッキへの降下、クレーンによる部品の持ち上げ、航空・航路障害灯の交換などの訓練ができる。1週間程度で様々な作業の訓練ができるカリキュラムを作成する。

国内では洋上風力の保守作業の訓練施設ができ始めたが、欧米の風車メーカーなどでつくる非営利組織GWOの規格に基づき、プールなどでの安全訓練にとどまる。北拓の吉田響生専務は「実践的な人材育成に活用し、風力発電市場の拡大に貢献したい」と話した。6月から北拓社員の訓練を始め、その後に幅広く希望者を募る。

20年以上稼働する洋上風力のO&Mは、風車部材の製造や組み立てなどと並ぶ重要な事業だ。日本風力発電協会は同分野の技能職が2030年に2300人必要になると推計する。政府は50年カーボンニュートラルをめざして洋上風力発電の導入量を30年までに10ギガワット(ギガは10億)とする目標を掲げる。

北拓などの洋上風力発電施設の運用・保守人材の訓練施設が完成した響灘地区(北九州市、23年11月撮影)

北九州市は2000ヘクタールある響灘地区を洋上風力関連産業の総合拠点とする「グリーンエネルギーポートひびき事業」に11年から取り組んでいる。O&Mのほか、風車部材などの製造、風車の組み立て・積み出し、部材の国際物流といった4つの機能の集積を目指している。北拓の訓練施設の稼働で、総合拠点化が一歩前進する。

北拓は1999年から風力発電の保守事業を手掛け、全国に2600基ある風車の8割にサービスを提供している。2016年に北九州市が誘致して、響灘地区に支店を開設した。商船三井が24年3月に同社を子会社化している。

(木下修臣)

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