西武ホールディングス(HD)は28日、東京都内で8階建てのオフィスビルを取得したと発表した。同社が長期戦略で不動産に価値を上乗せして再販売していく「回転型ビジネス」に転換を図ることを宣言して以降、最初の物件取得となる。
東京都文京区本郷3丁目にある「TWG本郷」を取得した。1992年に竣工した8階建てのオフィスビルで延べ床面積は1200平米ほど。取得金額は非公表だが十数億円規模とみられる。
西武HDは5月上旬に発表した「西武グループ長期戦略2035」で、不動産を保有し賃料を収入源とするのではなく、取得した不動産の価値を高めて売却するビジネスモデルに転換することを明記した。2023年度に127億円だった不動産事業収益を、35年度までに450億円にすることを目指すとしている。25年3月期は不動産の新規取得のための投資枠200億円を設けている。
西武HDの不動産事業を担う西武リアルティソリューションズの大塚武史執行役員は取得した物件について「池袋や高田馬場、新宿など西武のイメージを持ちやすいエリアとその周辺で投資物件を探した」と話す。スタートアップのオフィスとしての需要を見込んでいるという。
今回の物件について具体的な売却時期などは未定。東京のオフィスの不動産利回りは平均で3%台くらいだといい、大塚氏は「賃料を高めに設定して平均を上回る利回りを実現したい」と話す。また今年度取得できる物件数については「多くて5件ぐらいになる見込み」とした。
ただ、回転型ビジネスは大きな売却益を見込める半面、賃料収入のように安定した収入は見込みにくく、売却額はその時々の市況に左右されやすい。大塚氏は「西武の不動産はホテルやレジャー関連が多く、今後新型コロナウイルス禍のような感染症の流行があればダメージを負ってしまう。物流施設や住宅などポートフォリオを分散しリスク耐性をつける」と話した。
回転型ビジネスへの転換の一環として同社は今後の開発投資などに向けて赤坂プリンスホテル跡地に建設した複合ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京・千代田)を今年度内にも売却する。現在、売却先の選定を進めているとみられる。
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