移動式ゴーストレストランを手掛ける米ワンダー(Wonder)はCVCのグーグル・ベンチャーズなどから7億ドルの出資を受けた=同社のサイトから
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

2024年1〜3月期のCVCによるスタートアップ投資は堅調だった。CVCが参加した資金調達ラウンドの調達額は前四半期比26%増え、スタートアップ市場全体の伸びを上回った。

CVC投資の伸びをけん引したのは、1回の調達額が1億ドル以上のメガラウンドだ。CVCが参加したラウンドの調達額のうち、メガラウンドが占めた割合は47%と、22年1〜3月期以降で最も高かった。

CVCによるスタートアップへの投資件数は前四半期比横ばいだった。スタートアップ市場全体では数年ぶりの水準に急減しており、CVC投資の底堅さが改めて示された。

以下はCVCの主な状況だ。

24年1〜3月期のCVCが参加したラウンドの調達額は前四半期比26%増の150億ドルに達した。調達額の半分近く(70億ドル)をメガラウンドが占めた。一方、CVCが参加したラウンドの件数はほぼ横ばいで、前四半期比1%増の851件だった。

24年1〜3月期のCVCが参加したラウンドの調達額、150億ドルに回復。半分近くはメガラウンドでの調達(CVCが参加したラウンドの調達額、公表ベース)

24年1〜3月期にCVCが参加したメガラウンドは33件で、22年7〜9月期以降の最多に並んだ。調達額トップのメガラウンドは、移動式ゴーストレストランを手掛ける米ワンダー(Wonder)の7億ドルで、アメリカン・エキスプレス・ベンチャーズとグーグル・ベンチャーズが出資した。2位はヒト型ロボットを開発する米フィギュアAI(Figure AI)の6億7500万ドルだった。インテル・キャピタル、米マイクロソフトのM12、米エヌビディアのエヌベンチャーズ、米オープンAI・スタートアップ・ファンド、サムスン・ベンチャーズが参加した。

24年に入ってからのCVC投資件数全体に占めるアーリーステージ企業の割合は66%で、このペースが続けば十数年ぶりの高水準になる。アーリーステージのシェア上昇をけん引しているのは欧州とアジアで、欧州では73%、アジアは66%に上っている。米国は59%だ。

CVCによるフィンテック企業への投資件数は前四半期比41%増の165件で、22年10〜12月期以降で最も多かった。24年1〜3月期に投資件数が最も多かったCVCは暗号資産(仮想通貨)取引所大手OKXのOKXベンチャーズで、27社に出資した。23年10〜12月期のトップは11社に出資したコインベース・ベンチャーズで、暗号資産分野のCVC活動が回復する可能性を示している。

中国でのCVCが参加したラウンドの調達額は前四半期比40%減の3億ドルだった。投資件数も同14%減の78件と、20年1〜3月期以来の低い水準にとどまった。調達額トップのラウンドは、再生可能エネルギー関連機器を開発するSungrow New Energyの4800万ドルだった。CVCの中安資本が参加した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。