愛媛県洋上風力産業振興コンソーシアム設立総会であいさつする中村時広知事=松山市で2024年5月22日午後2時58分、太田裕之撮影

 愛媛県が洋上風力発電市場への県内企業の参入を目指し、官民挙げて取り組む「愛媛県洋上風力産業振興コンソーシアム」を設立した。県を事務局に、造船・船用機器や大型製缶・機械加工などの県内企業30社が会員として参加。国内外の最新情報の共有、県内企業の高い技術や製品の発信、業界大手企業などとの協業に向けた商談機会の創出に取り組む。

 洋上風力発電は欧州で先行、近年は中国も急伸するなど世界的に拡大中だ。自然エネルギー財団によると、2023年末の世界の累積導入量は7270万キロワット、32年には4億4620万キロワットと見込まれる。日本も脱炭素化に向けて政府が推進に転じ、40年に最大4500万キロワット(原発約45基分相当)を目指す。1基あたり1万~2万点とされる部品などの国内調達比率は60%が目標。維持管理も含めて裾野が広い成長産業と目されている。

 愛媛県によると、県内には造船をはじめ、洋上風力発電施設の施工・メンテナンスに生かせる技術や製品を持つさまざまな企業があり、参入にも関心を示している。だが、日本では遅れた分野でサプライチェーンも未整備。個々の企業では難しさが指摘され、コンソーシアム設立に至った。四国では初の取り組みとみられる。

 事業は第1~3期に分けて計画する。第1期は26年度まで3年をかけ、まずは県内企業の優れた製品や高い技術を紹介する「スゴ技データベース別冊」を発行。英語版も作って国外企業にもアピールする。専門家による「伴走支援」も特長で、データベースは一般社団法人「日本風力発電協会」(東京都)の上田悦紀(よしのり)・国際部長が監修。24年度中にもセミナーや情報交換会、国内外の大手企業とのビジネスマッチングを実施し、東京ビッグサイトで25年2月に開催される「WIND EXPO」に愛媛県ブースを出展する。

 さらに、40年代までの第2期で、これまでの世界の主流である着床式施設のサプライチェーン参入、50年代の第3期では今後の拡大が見込まれる浮体式施設への参入を進めていくという。5月22日に松山市内であった設立総会で中村時広知事は「1社ではなかなか敷居が高いが、愛媛県の産業の底力を結集してビジネスチャンスを探っていく」などとあいさつした。

 この日はコンソーシアムに助言する上田氏によるセミナーもあった。上田氏は海外の先行事例を示しながら「世界で毎年5兆円ほどが動く市場。5年後には20億~25億円ほどに成長すると言われている」と説明。関連する仕事が今後増えていくと強調した。近年になって動き出した国内の状況も解説して「明治維新や戦後復興と同じことを、洋上風力でもう一度やりませんか」と語り、愛媛からの参入を呼びかけた。【太田裕之】

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