2020年6月に和歌山市役所の職員だった男性(当時28歳)が自殺したのは業務上のストレスが原因だったとして、遺族が公務員の労災に当たる「公務災害」の認定を求めている。男性は18年8月、職場での公金の不正流用を公益通報していた。支援団体の会合が1日、和歌山市内であり、母親が「息子の死を無駄にしたくない。(内部告発をして)苦しい思いをしている人が他にもいるのではないか」と訴えた。
市役所で不正流用
市や支援団体によると、男性は15年4月の採用で、18年5月に青少年課に異動した。担当となった平井児童館で「子ども会」に対する支援交付金の不正な事務手続きを命じられ、うつ病を発症し休職。児童館では実態のない人権学習の講師謝礼金などを名目に、虚偽の補助金申請書類が作られていた。休職中の8月に公益通報制度を使って内部告発し、市は調査後の20年2月に管理職ら職員15人を懲戒処分とした。
男性は18年10月に職場復帰したが、20年4月に通報を受け処分された職員が同じフロアに異動したという。市は毎日新聞の取材に「別課の副課長で業務上の接点や指揮命令関係はなく、公益通報者と把握した上で両人の適性や職歴を踏まえた配置だった」と説明しているが、母親は「公益通報者が守られていなかった」と指摘する。
自殺する数日前には公用車で物損事故を起こし、警察への報告義務を果たしていなかったことなどで上司から叱責を受けていた。母親は「相当落ち込んだ様子で、公益通報の件も相まってひどいストレスにさらされていたのでは」とみている。
市は男性の死後、関係する部署の職員約120人に聞き取りを行い、遺族に調査結果を報告した。
遺族は20年11月、地方公務員災害補償基金県支部に対し、公務災害の認定を請求。同支部は24年1月に「(男性に対する)パワハラや嫌がらせの証言はなく、強度の精神的負荷があったとは認められない」などとして退けた。遺族は5月13日に不服を申し立てている。【安西李姫】
「市の対応は不適当」脇田滋・龍谷大名誉教授(労働法)の話
公益通報者と処分を受けた職員を同じフロアに配置したことは、不適当な対応だったと言える。公益通報をした事実に限らず、雇用主には労働者の働きやすい環境を守る安全配慮義務がある。また公益通報から2年以内の自殺であり、「公務外災害」の認定が出ているものの相関関係がないとは考えにくい。
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