APモラー・マースクの業績は好調だ(5月2日、ドイツ北部ハンブルク港)=AP

【フランクフルト=林英樹】海運世界大手デンマークのAPモラー・マースクが約1カ月間で2度、2024年12月通期の業績予想を上方修正した。紅海危機による世界的な運賃上昇に加え、クリスマスシーズンに向けた注文増から前倒し出荷が拡大したため。同社は「運賃はさらに上昇する兆候がある」とし、好況が当面続くとみている。

マースクは4日、24年12月通期のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)見通しを70億〜90億ドル(約1兆1000億円〜約1兆4000億円)に上方修正した。5月2日には、従来の10億〜60億ドル(前期比90〜37%減)から40億〜60億ドルに引き上げていた。

背景にあるのが、イエメンの親イラン武装組織フーシによる紅海攻撃の長期化だ。最短ルートである紅海を回避するコンテナ船が増え、運賃は上昇傾向にあった。ただ当初は新型コロナウイルス禍後を見越した新造船の大量発注による供給過剰の解消に時間がかかると予想されていた。

しかし需給ギャップの解消は足元で急速に進んでいる。ノルウェーのデータ分析XENETAによると、極東から米国西海岸への海上運賃は6月1日、1FEU(40フィートコンテナ)あたり5170ドルで、紅海危機がピークだった2月1日(4820ドル)を7%上回った。特にこの1カ月間で急上昇し、5月だけで運賃は57%増えた。

極東から北欧への運賃は2月のピーク時比9%増の5280ドル。極東から地中海への運賃も6175ドルに達し、5月だけで46%増えた。

紅海回避でアジアや地中海の一部の港でコンテナ船の混雑が深刻化。海運の停滞を見越し、クリスマスシーズンの発注を前倒しする顧客が増えた影響が大きかった。

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