イメージ写真=ゲッティ

 客からの理不尽な要求や威圧的な言動など迷惑行為を指す「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。飲食、介護などサービス職では従業員の3分の1超が「カスハラ」の被害を受けていることが民間調査で明らかになった。強いストレスにさらされている現場では、対応が悪い企業からの転職希望が高まることも浮き彫りになった。

 民間調査機関のパーソル総合研究所が2~3月、サービス業の従業員を対象にインターネットで調査。全国20~60代の男女約2万人の回答を得た。

 カスハラの有無を尋ねると、全体の20・8%が「3年以内に被害を受けた」と答えた。「3年以上前に被害を受けた」という人も合わせると3分の1を超える計35・5%が被害を経験していた。

 カスハラ被害者3000人に「ここ3年のカスハラ経験の増減」を聞くと、32・6%が「増えた」と回答。「変わらない」も46・8%あった。「減った」は13・8%にとどまっており、カスハラ被害は拡大している。

 深刻なのは、被害を受けた従業員を守るべき会社側の対応がずさんなことだ。カスハラ被害者の36・3%が「嫌がらせの被害を(雇用先が)認知していたが、何も対応はなかった」と訴えた。

 従業員がカスハラ被害を会社に報告・相談したにもかかわらず、適切な対応をされないことを「セカンド・ハラスメント」と呼ぶ。25・5%がセカンド・ハラスメントを受けた経験が「ある」と答えた。

 複数回答で具体例を聞くと「ひたすら我慢することを強要された」(11%)、「軽んじられ、相手にしてもらえなかった」(8・9%)といった声が多い。「退職を促された」(0・7%)という人もおり、本来は従業員を守るべき会社や上司が被害に追い打ちを掛けるケースが目立つ。

 こうした不誠実な姿勢は従業員の会社離れを引き起こす。1年以内にカスハラ被害にあった人はそうでない人に比べ、転職意向が2倍近くに上昇している。

 ただし、パーソル総研によると、カスハラがあっても、被害者を適切にケアしたり、事例として共有したりといった対応をした企業は、対応していない企業と比べ、転職意向を半分程度に抑えられるという。

 パーソル総研の小林祐児上席主任研究員は「研修による知識付与、マネジメント改革の実施は、カスハラに強い組織を作る」と指摘し、企業に対しカスハラ対策に本腰を入れるべきだと助言している。【嶋田夕子】

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