古墳をモチーフにした様々な施設が集まる「コフフン」(奈良県天理市)

奈良県天理市の天理駅前広場「コフフン」で、産学官が連携した地域活性化の取り組みが動き出す。天理大学がサテライトキャンパスを設け、アウトドア用品のモンベル(大阪市)と共同で授業を実施。モンベルが今夏にオープンを予定するショップやカフェを実践の場として活用し、同市の観光・農業の人材育成や振興につなげる。

天理大学の永尾比奈夫学長とモンベルの辰野勇会長が3月末、共同事業体の結成について調印した。モンベルが大学と事業体をつくって地域振興に取り組むのは初めて。施設を無償貸与し、事業を委託・連携する天理市の並河健市長も参加した。

共同事業体の結成調印式に参加したモンベルの辰野会長(中央)や天理大の永尾学長(左)、並河市長(3月27日、天理市)

まず17日から、駅高架下の南団体待合所に設けたサテライトキャンパスで学生向けの授業を始める。観光と農業をテーマにした2つの授業を週に1コマずつ実施する。授業は大学の教員が担当するが、モンベルの社員や農業事業者らも講師として指導にあたる。

授業ではマーケティングや経営の基本を学び、市内の観光スポットをめぐる旅行商品を造成したり、イベントを通じた農産物の普及策を考えたりする。モンベルのカフェやショップのほか、観光案内所を学びの実践の場として活用。学生は企画したプランの提案やガイドとして現場に立ち、カフェのメニュー開発やイベントに取り組む。

モンベルの辰野会長は締結式で「事業には社会に求められていることと同時に、採算が取れているかも重要になる。学生には現場で身をもって体験してほしい」と期待した。自らもサテライトキャンパスで授業を担当することに意欲を見せた。

モンベルは自治体を中心に140を超える団体と連携協定を結んでいる。北海道小清水町など人口の少ない自治体にも出店して人を呼び込み、アウトドアイベントを通じた誘客でも成果をあげている。今回は大学と事業体を設立した初めての例だが、「今後も地域の特性やニーズに合わせた連携のあり方を探っていきたい」(同社)とする。

天理市は日本最古の道とも言われる「山の辺の道」など多くの観光資源を持つ。3月には「オーガニックビレッジ」を宣言して農業の振興にも力を入れるが、発信力が課題になっている。モンベルや大学、地域の事業者との連携を通じてエコツーリズムの魅力を高めるなどして、国内だけでなく海外からの誘客拡大を目指す。

サテライトキャンパスでは秋以降、正規の学生以外も大学の授業を受けられる「科目等履修生制度」を使って市民ら学外の人も授業に参加できるようにする。市民の交流拠点となっている駅前広場を核に、学生にとどまらず市民にも参加意識を広げていきたい考えだ。並河市長は「観光や農業の資源を生かし切る。産業振興を担う人材が育っていけば」と話す。

(高田哲生)

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