NTTドコモは11日、デジタル資産の非代替性トークン(NFT)を取得すれば街づくりに参加できるサービスを始めると発表した。第1弾として北海道上川町と組み、ふるさと納税で同町に寄付した人に返礼品として提供する方針だ。NFTの取得者はバーチャルな町の会議でアイデアを出し、投票による決議にも参加できる。
NFTはブロックチェーン(分散型台帳)技術で複製や改ざんを難しくして、デジタル資産の所有権を証明する仕組みだ。今回はドコモが持つNFTの技術と、地方ならではの街づくり体験を掛け合わせる。
ふるさと納税を活用
詳細は今後詰めるが同町にふるさと納税で1万円程度寄付すると、返礼品としてNFTを提供する枠組みを想定している。返礼品には特産品などを付加することも検討する。年内の開始を目指す。NFTは同町の街づくりに参加する権利証書となり、取得者はSNSの「ディスコード」内に設置したコミュニティーに参加できる。
参加者はSNS上で話し合いながら、旅行パックなどの商品開発や祭りなどイベントの内容を決めていく。複数のアイデアを出して投票で決める。専門知識を持った参加者が町内の学校で講義をするといった企画も検討する。年間で4つ程度の案件を進める。遠隔地からも街づくりに参加してもらい、体験を通じて町への関心を深めてもらう。
上川町は北海道旭川市から車で1時間ほどのところにある。新型コロナウイルス禍前に年間180万人が訪問していた層雲峡温泉や、フレンチの巨匠、三国清三シェフがプロデュースするレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」といった観光資源がある。それでも少子高齢化が進み、人口は2010年の4500人から足元では3000人強に減少した。町は何らかの形で地域と関わりを持つ「関係人口」の引き上げに力を入れる。
今回の取り組みでは当初50人ほどの参加者を見込む。ドコモは、運営しているメタバース(仮想空間)「MetaMe(メタミー)」で上川町を紹介するエリアを無償で設置し、知名度を高めて参加者を増やしていく。ノウハウを積み上げ、他の自治体への展開も視野に入れる。
上川町は地方創生に向けた政府からの交付金などで財源を捻出する。ドコモはNFTを発行する際の手数料を自治体から受け取る。NFTを通じて権利を販売する事業の拡大を目指しており、今回の取り組みはその実証的な位置づけでもある。
同社新事業開発部の小田倉淳担当部長は、上川町のように魅力発信に力を入れる地方自治体について「リモートの技術をいかしたドコモのサービスと相性がいい」と話す。メタミー内での広告なども収益源に育てていく。
酒蔵とも連携
ドコモはこれに先駆け、2017年に同町で誕生した酒蔵、上川大雪酒造と組んで、日本酒「上川大雪」のNFT会員証を5月末に発売した。価格は1万円からで、購入して会員になると、日本酒の味やラベルのデザインを決める企画に参加できる。杜氏(とうじ)や他の参加者と話し合って造ったオリジナルの日本酒を2本、受け取ることもできる。
上川町の取り組みで想定しているように、会員証を提示するとディスコード内のコミュニティーに参加できる。酒蔵見学や稲刈り体験などの企画も用意して、日本酒ができあがるまでの過程を体験し、楽しめるようにする。
(平塚達)
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