福岡市で拠点拡大を発表するアクセンチュア日本法人の江川昌史社長(左から2人目)=福岡市博多区で2024年3月12日午後2時ごろ、久野洋撮影

 世界的なコンサルティング企業が相次いで九州で事業を拡大している。アクセンチュアやEYジャパンが人員を大幅に増やすほか、福岡に事務所を新設する企業もある。情報技術(IT)分野などの人材の採用難が首都圏で続く中、九州での採用を強化する。半導体関連産業やスタートアップ企業が増える九州で需要を掘り起こす動きもある。

 「福岡はポテンシャルが高く、我々の仕事にマッチしている」。福岡市博多区のオフィスビルで3月、アクセンチュア日本法人の江川昌史社長が福岡での拠点拡大を発表した。2019年に同市早良区の臨海部に拠点を開設した同社は、人員拡大に伴い博多区のビルでも2フロアを借り切った。

 アクセンチュアは顧客企業の業務を外部委託として受注し、デジタル技術で効率化している。委託された業務のデジタル化、データ分析を福岡で担っており、開設当初は数十人だったメンバーは非正規雇用を含め1000人規模まで拡大した。拠点拡充後に人員を3倍に増やす方針という。熊本市にも14年に拠点を設けており、約400人が働いている。3月に同市内の別のビルにも拠点を拡張し、数年以内に人数を2倍にする。

 アクセンチュアは、もともと企業の業務の外部委託を中国などで担っていたが、現地の人件費上昇などを受け日本国内に回帰。業務のデジタル化の支援に向けてIT人材などを積極的に採用している。

 EYジャパン傘下のEY税理士法人とEYビジネスパートナーも、23年に福岡市内の事務所を拡張した。現在は数十人の規模だが、2~3年後に非正規雇用を含め200人規模を目指す。会計や税務を学んだ新卒学生や、企業の財務経験者の採用を目指す。EYは半導体大手「台湾積体電路製造」(TSMC)などの進出にも着目。九州企業でも業務の国際化やデジタル化が進むことで、「我々のビジネスチャンスも広がる」(広報担当者)と受注拡大を狙う。

 このほか、22~23年にかけて、ボストン・コンサルティング・グループや、マーサージャパンも福岡市の新築ビルに相次いで事務所を開設し、九州での顧客開拓を目指す。少子化による働き手の減少や国際化・デジタル化への対応を課題とする九州企業は多く、コンサル企業にとって商機となっている。

 九州経済調査協会の南源来研究員は、「九州は理工系の高度人材の受け皿となる企業が比較的少なく、関西や関東に流出していた。コンサル企業はリモートワークが進んでおり、九州の拠点で国内や海外を相手に経験を積める働き方を整えている。地元で働きたい人材の受け皿になる。福岡は住環境も良く、移住して働きたい人もいるだろう」と話している。【久野洋】

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