米アップルがスマートフォン「iPhone」に生成AI(人工知能)を搭載すると発表した。アップルは世界のスマホ市場で2割のシェアを握り、国内では約5割を占める。生成AIが消費者に身近になるなか、産業界や規制当局は対応を急ぐ必要がある。
文章や画像を自在につくれる生成AIの実用化では米マイクロソフトが先行し、長年にわたり研究してきた米グーグルが追い上げている。両社はパソコンやスマホといった消費者向けIT機器への搭載を進めており、アップルの追随も想定内といえる。
生成AIは機器の利便性や生産性を高める効果が見込まれ、iPhoneも利用者の代わりに電子メールに返信する機能などを搭載する。一方で、誤情報の生成やプライバシー侵害といったリスクもあり、特に国内で幅広い利用者を抱えるアップルは対策と説明を徹底すべきだ。
利用者も生成AIが発展途上であると十分に理解し、性能に限界があることを知ったうえで賢く使う姿勢が欠かせない。
IT業界では10年に1回程度の頻度で技術の大きな転換が起こり、そのたびに新たな産業が生まれてきた。直近ではスマホが普及し、ライドシェアやゲームの市場が世界で大きく拡大した。
iPhoneをはじめとするスマホが生成AIに本格的に対応し、新たなサービスが生まれる契機となる可能性がある。日本の産業界やスタートアップ企業もこの機会を生かし、世界で使われるサービスの開発に挑戦したい。
新産業やサービスが生まれるのは市場で健全な競争環境が保たれてこそだが、生成AIの分野では懸念もある。
アップルは生成AIの搭載に際して、複雑な質問に回答するために対話AIのChat(チャット)GPTを開発した米オープンAIの協力を得た。アップルはオープンAIを不当に利することを避け、競争当局も競争環境を健全に保つために監視を強めるべきだ。
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