今月始まった1人当たり4万円の定額減税で消費は増えるのか――。小売業界では、家電の4万円特価を打ち出す店がある一方で、物価高で消費者の生活防衛意識が強い中では「減税はアピール材料にしにくい」と静観する店も多い。定額減税商戦には温度差が生じている。
イトーヨーカ堂などは静観
イトーヨーカ堂は19日、夏物衣料などのセール「清涼祭」を始めた。定額減税ではなく、暑さ対策を前面に打ち出している。西日本を中心に商業施設を展開するイズミ(広島市)も6月から食品などの「全力応援値下げ」を実施しているが、定額減税はうたっていない。百貨店も店頭で定額減税をアピールする店は少数派で、大丸松坂屋百貨店も、冷凍食品の通信販売で定額減税セールを打ち出した程度だ。
もともと6月は夏物用品需要やボーナス支給で消費が盛り上がる時期だ。定額減税も消費にプラスの効果を及ぼしそうだが、小売業界では「現金給付と違って分かりにくい。浸透するか注視している」(家電量販店)、「物価高の中、定額減税でも手取り額の増加は実感しにくい。生活応援をアピールしている」(スーパー)などの声が多い。ある百貨店の広報担当者は「生活防衛意識が高いのに高級品をPRすると、むしろ反感を買うのでは」と話し、訪日外国人客や富裕層向け販売を強化する考えを示した。
イオンは定額減税セール
一方、イオンは6月から全国で順次、定額減税セールを展開している。福岡県のイオン福岡店の売り場では「定額減税スタート! 家計に追い風!」とのポスターが掲げられ、炊飯器やランドセルなどが約3割引きの4万円特価で並んでいた。子育て用品など、もともと需要がある商品の購入を後押しする狙いもあり、前年同期比1割の売上高アップを目指す。東京都の百貨店「松屋浅草」は6月上旬、「定額減税スタート」のポップを添えて食品を特価販売し、売り上げが約5%増えたという。
定額減税の規模は約3・3兆円。実質賃金のマイナスが長期化する中、夏のボーナスと合わせて消費喚起を促すのが政府の狙いだ。だが、大半は貯蓄に回るとみられ、大和総研は個人消費の押し上げ規模を3000億~7000億円と試算する。【久野洋】
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